研究概要 |
本研究は木材の腐朽過程をコンピュータ上でシミュレートし、さらに腐朽により強度低下した構造部材が、外力により破壊する過程をもシミュレートすることを最終目的としている。研究を開始して木材中の腐朽過程を詳しく追跡した研究がほとんどないことが判明したので、本年度も前年度に引き続き腐朽進行過程の3次元的異方性を明らかにする実験を主として行った。木材のL,R,T方向それぞれに長いスプルースの角柱小試験体に対して、劣化試験チャンバーで強制腐朽試験を行い、X線CT装置で腐朽前後の密度変化を追った。CT値より出来るだけ正確な密度の値に補正する方法を確立した。これより繊維方向の腐朽速度が半径方向、接線方向と較べて非常に速いこと、また、年輪内では早材より晩材部の方が密度低下率が大きいことが判明した。また、腐朽の進行とともに木材の収縮率が大きく変化していることが明らかになった。X線CT装置で乾燥時の寸法変化を3次元的に視覚化できた。 3次元での腐朽進行パターンを、取り敢えず現行の密度低下から簡易換算した強度データで置き換えて、要素の強度マトリックスを作成し、腐朽の進行した角柱がどのように破壊する可能性があるのか、圧縮破壊を例として、有限要素法によって解析することも開始した。また、腐朽した材は非常にもろくなることが知られているが、とくに腐朽したボルト接合部などに捻り力を加えると簡単に壊れてしまう。この外力様式に関しては健全材でのデータがそもそもないので、両端にボルトを通した棒の捻りに関しても実験を行った。
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