研究概要 |
(1)糖化前処理工程用微生物の作成 高活性リグニン分解菌Phanerochaete Sordida YK-624株をベースとして、5-アミノレブリシ酸シンターゼ遺伝子高発現株を作出し、そのマンガンペルオキシダーゼ(MnP)産生能を調査したところ、野生株と比較して約3倍のMnP産生能を示す遺伝子導入株の取得に成功した。さらに、MnPがリグニンを分解する際、基質として必要となる過酸化水素を生産する酵素であるglyoxal oxidaseの遺伝子を高発現する株を作出し、本株のリグニン分解特性を調査したところ、野生株より優れたリグニン分解特性を示すことが判明した。 (2)褐色腐朽菌キチリメンタケKU-70株は、難腐朽性バイオマスであるスギ材を速やかに分解する優れた特性を持つが、高分子リグニン分解能は有していない。そこで本菌に高分子リグニン分解能を持たせることを目的として、KU-70株における遺伝子導入系を新たに構築した。効率良く遺伝子導入を行うにあたって重要な要素となるプロトプラスト調製法、遺伝子導入マーカー選択法等を種々検討した結果、ハイグロマイシン耐性遺伝子をマーカーとして容易に任意の遺伝子を導入可能な系を構築した。本遺伝子導入系を用いて白色腐朽菌由来の高分子リグニン分解酵素(YK-Lips)ゲノムDNAを導入した結果、本遺伝子がmRNAとして異種発現していることを確認した。 (3)セルロースを直接発酵できる白色腐朽菌としてPhlehia sp.MG-60を選抜し、リグニンを含むリグノセルロース原料(広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、新聞紙)から酵素添加なしに直接エタノールを生成することを示した。ヘキソース(グルコース,マンノース,ガラクトース,フルクトース)を発酵基質としたとき,いずれの糖もPhlebia sp.MG-60により効率よくエタノールに変換された(それぞれ理論収率の86.9,79.0,79.5,78.2%の収率),酵母で発酵が困難なキシロースを発酵基質とした場合には、理論収率の65.0%のエタノールが生産された,白色腐朽菌による脱リグニン前処理と組み合わせることで、脱リグニン同時糖化発酵が可能であることが示された。 (4)九州大学内の土壌を採取し、土壌から直接あるいは結晶性セルロースを炭素源とした集積培養系よりメタゲノムライブラリーを作成し、スギに対して高い活性を有するセルラーゼの獲得を試みた。少なくとも4種の新規一次配列をもつセルラーゼ遺伝子を獲得した。これらの内二つのセルラーゼは結晶性セルロースに対して活性を示し、脱脂スギ木粉に対してもセルラーゼ活性を示した。
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