本州において、2007年と2008年で発生した合計3件のシガテラ中毒は、発症者が自ら本州沿岸で釣り上げたイシガキダイによること、2009年に本州で発生した1件は、鹿児島県喜界島で釣り上げたバラフエダイによることがわかったが、それ以降今年度までに本州沿岸で得られた魚類によるシガテラの報告は無かった。 シガテラ毒生産種Gambierdiscus toxicusの分布を調べるため、黒潮域の静岡県伊東および千葉県小湊において調査した結果、採集した海藻から数は多くないものの同種を発見できた。本種が検出された海藻は特定の種ではなく、マクサ類・ヘラヤハズ・ウミウチワ・シマオオギといった様々な種であり、海藻に対する付着の特性は認められなかった。これは今までの知見と異なっていたが、数少ない細胞が様々な海藻に付き、それらが多く増殖するには特定の海藻であること、あるいは水温等の環境が継続的に長期適していることが必要と考えられた。これらの海藻から得られた同種の培養株を作成し、成長生理学的特性等を調べた。過去の研究で確立されていた東京都八丈島・和歌山県・沖縄県およびタヒチの株と温度耐性を比較したところ、静岡県と千葉県から得られた株は、沖縄県およびタヒチから得られた株よりも低い温度で好適な成長を見せた。塩分耐性においては、地域間で大きな差は無く、比較的高い塩分において成長が可能であり、塩分30以上の高塩分下で最も良好な成長が確認された。 このほか、シガテラに関連するとされているOstreopsisも千葉県・静岡県・沖縄県で実施した調査から発見されており、これらの培養株を確立することができた。培養株を用いて種を査定したところ、千葉県・静岡県から得られた培養株は、O.ovataであり、沖縄県からはO.ovataとO.lenticularisであった。
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