研究課題
本研究は、ブタの産肉、肉質形質など量的形質を支配する遺伝子座(QTL)の情報を純粋種の改良に利用することにより、飛躍的に改良効率を高めるブタの系統造成システムの開発を目的とする。昨年度までに、デユロック種のQTL解析を行い、脂肪蓄積に関与する遺伝子としてレプチンレセプター(LIEPR)遺伝子を特定し、Exon14のc.2002C>Tの変異が全脂肪面積割合に関する遺伝分散の約40%を説明すること、脂肪酸組成に関する遺伝子としてSCD遺伝子のプロモータ領域にある2つのSNPが皮下脂肪内層、外層、筋肉間、筋肉内脂肪のオレイン酸(C18:1)の全遺伝分散のそれぞれ17%、24%、9%、30.5%を説明することを明らかにした。さらに、IMFに関してQTLが検出された第13番染色体の有意な領域には存在するPPARγとグレリン遺伝子について、SNP探索による関連解析を行った。しかし、2遺伝子のSNP間で有意な差は認められなかった。今年度は、第13染色体上にさらにMSマーカーを32個まで増やしてQTL解析を実施した。その結果、最大LODスコアーを5.10まで高めることができ、ピークQTL領域が二つのMSマーカー内にあり、存在する遺伝子としてclstn2(calsyntenin2)遺伝子を検出することができた。この遺伝子の機能については未解明のため、選抜世代に伴う二つのマーカーのハプロタイプの遺伝子頻度とIMF育種価との変化の関連を検討した。その結果、統計的に有意な関連を示すハプロタイプを検出することができた。さらにこれまで得られたゲノム情報を実際の改良システムに利用した際の効率を比較検討した。SCD遺伝子のSNPを用いて脂肪酸のオレイン酸の改良量を比較検討した。その結果、時間当たりの改良量では、SNP情報を活用した選抜システムの効率が高いことが明らかとなった。本研究の成果は、机上のシミュレーションではなく、実際のデータとゲノム情報を使って得たQTL情報に基づく改良システムの比較検討の成果であり、今後の育種改良を進める上で極めて重要な情報を提供することができたと考える。
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Animal Science Journal
巻: (未定)(印刷中)
10.1111/j.1740-0929.2011.00963.x
日本養豚学会誌
巻: 48 ページ: 147-162