研究概要 |
H21-22年度のSox17欠損ES細胞を用いたキメラ解析の結果,Sox17欠損細胞は、胆嚢領域に胆管への分化能を欠損していることが明らかとなった。 最終年度は、繰越分に関しては予定通り消化して, 以下の新たな成果が得られた。1) 胆管前駆細胞でのSOX17の発現を、Sox17 knock-in 系統による解析の結果,E15までは、SOX17陽性の胆管前駆細胞が、胆管原基の先端に維持されていることを確認した。2)遠位部のSOX17陽性の胆管前駆細胞は、近位部のSOX17陰性領域と比較し,有意に高い増殖活性(BrdUの取り込み, PCNA, Ki67陽性)を示した。3)Sox17へテロ胆管上皮細胞は,先端部の増殖が低下し、基底膜領域が有意に薄層化し、一部断裂していることも明らかとなった。4)発現解析により、ZO1, E-cadなどの上皮細胞マーカーの発現とその局在には変化がなかったが、Sox17へテロ胆管上皮において、野生型と比べintegrin-b1の発現と幾つかの因子の発現低下を見出した。5)in vivoでの解析のみでは胆管異常の原因追求は困難だと判断し、胆嚢領域の増殖、肥厚、遠位(胆嚢)方向への管の伸長、E13.5 原始胆管から16.5dpc相当の形態形成が誘導される器官培養系を新たに開発した。(4)新しい器官培養法において、in vivoと同様にSox17へテロ(B6)の胆管上皮は、腔内に剥離し、脱落隗を生じることが判明した。 本成果は,SOX17陽性の胆管前駆細胞は、増殖活性が高く維持され、Sox17欠損胚では胆管が消失することから、SOX17陽性の胆管前駆細胞は、胆管系の形態形成の主役を演じ、その大部分の構築に寄与する可能性が強く示唆された。また、詳細な胆管異常の原因の解明とSOX17陽性前駆細胞の動態解析を可能にする器官培養系の開発にも成功した。
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