研究概要 |
サンガー法と次世代シークエンサーによるゲノムショットガン解析とギャップクロージングにより、Theileria orientalis Chitose株の全ゲノム配列解読を完了した。4本の染色体の総塩基数は9,089,014ベースでありIkeda株のそれと比べて約1%多かった。各染色体のGC含量は38.8-39.8%であり、Ikeda株のそれと比べて1-2%低く、ゲノム構造にやや差があることが明らかとなった。さらに、遺伝子領域予測と両株間の伝子比較に着手した(平成23年度完了予定)。ウシでの感染試料解析のために両株のrRNA遺伝子ならびにITS領域を比較し、ITS領域に塩基数の違いがあることを見出し、この領域のPCR産物のフラグメント長解析による遺伝子型別法を開発し、牛小型ピロプラズマ病の分子疫学解析に応用できることを報告した。 190種の抗腫瘍活性のある化合物パネルを用いて、シゾント感染細胞に対する作用をスクリーニングした結果、65種の化合物が原虫感染細胞増殖を。特にP53の安定性に関わるMDM2活性を抑制する化合物、TIBL(trans-4-iodo, 4'-boranyl-chalcone)に着目して研究を進めた。その結果、シゾント感染細胞ではMDM2の過剰発現が起きており、同mRNAの異常スプライシング産物の存在が確認できた。さらに腫瘍抑制の鍵となるp53タンパク質の細胞内レベルの低下が起きていることが観察された。以上の結果から異常なMDM2分子の発現がp53の不安定化をもたらし、原虫感染による宿主細胞の不死化に関わっていることが明らかにできた。
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