研究課題/領域番号 |
21248038
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬場 忠 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40165056)
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キーワード | マウス / 受精 / 着床 / 精子 / 卵子 |
研究概要 |
受精と着床に関する応用基盤の構築を目指した基礎研究を行い、次のような成果を得た。まず、精子が卵丘細胞塊へ進入する際にアクロソーム反応が必要かどうかを調べた。野生型マウス精子を用いて受精能獲得処理中に自発的アクロソーム反応した精子をFITC標識した抗IZUMO1抗体で、また精子細胞核をHoechstで蛍光標識し、卵丘細胞塊へ媒精した。一定時間経過後に新しくアクロソーム反応した精子を免疫染色し、卵丘細胞塊表面、卵丘細胞塊の細胞外マトリクス、および卵子透明帯に存在する精子数を算出した。その結果、すでにアクロソーム反応している精子も未反応な精子も卵丘細胞塊へ進入し、卵子透明帯まで到達できることが明らかになった。次に、精子細胞膜に局在するヒアルロニダーゼSPAM1の欠損マウス精子を使って同様の実験を行うと、すでにアクロソーム反応を起こしている精子はほとんど卵丘細胞塊へ進入しなかった。また、卵丘細胞層通過時にアクロソーム反応を起している精子が有意に見いだされた。このように、精子の卵丘細胞塊進入にはアクロソーム反応が未反応であることが必要であり、透明帯通過までにその反応が起こることが示唆された。一方、着床部位決定機構に関しても検討を加えた。経産マウスでは、子宮内に出産痕が形成されて新規着床が起こらないことを利用して、着床痕部位と非着床痕部位での着床決定の分子機構に関して調べた。結果として、経産マウスの着床にはERK1/2経路によるERαの活性化が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題の当初目的は、受精と着床に焦点を当てて、それらの基本制御機構を解明することであった。特に、精子と卵子細胞塊の相互作用、子宮や卵管での精子受精能獲得機構、および胚盤胞胚と子宮内膜上皮細胞の接着機構に焦点を絞り、それらの分子基盤を明確にすることであった。現時点で自己点検すると、精子と卵子細胞塊の相互作用、および胚盤胞胚と子宮内膜上皮細胞の接着機構については一定の成果が得られたが、子宮や卵管での精子受精能獲得機構に関する研究がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
この研究計画の変更や研究を遂行する上での大きな問題点などは、特にないと考えている。子宮や卵管での精子受精能獲得機構に関する研究課題が遅れているが、これはその精製が非常に難しいためである。また、分泌液中の存在量が微量であることも原因のひとつである。しかし、受精能付与(促進)因子が子宮と卵管分泌液に存在することは明確なので、実験材料をマウスからラットへ変えて打開していく方策が考えられる。加えて、学術論文の投稿と掲載もやや遅れている。大学では雑務が多く時間的に飽和状態になっているが、なんとか克服するつもりである。
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