研究課題/領域番号 |
21248040
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福井 希一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00311770)
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研究分担者 |
内山 進 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90335381)
伊東 一良 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80113520)
小関 泰之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60437374)
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キーワード | 非線形光学顕微鏡 / 誘導パラメトリック発光顕微鏡 / 染色体動態観察 / 無染色可視化 / 低侵襲観察 / 細胞動態観察 / 極短パルスレーザー / ケージド化合物 |
研究概要 |
本課題では,極短パルスレーザー照射により四波混合過程で生じる微弱発光を検出し、対象物の構造のみならず対象物の分光学的性質を明らかとする、全く新しい光学理論に基づいた非線形光学顕微鏡、誘導パラメトリック発光顕微鏡(SPE顕微鏡)を用いて、従来不可能であった染色体の完全無染色での三次元観察を行い,蛍光抗体や染色剤の影響をまったく受けない状態での染色体構造の動的変化を可視化し、詳細が不明である細胞分裂時における核・染色体の構造変化について、これまでにない新しい知見を得ることを目的としている。平成22年度は,染色体試料としてIndian Muntjacの展開染色体標本を用い実験を行った。蛍光顕微鏡観察においてはHoechst33342で染色した展開染色体標本を用い、SRS顕微鏡観察においては無染色のまま用いた。ここで、二価陽イオンが染色体構造に及ぼす効果をみるため、展開染色体標本を封入しているバッファーを交換する新たな実験方法を導入した。この方法により、標本を定点観察をしつつ、二価陽イオン濃度の異なるバッファーと交換可能となり、同一標本における、二価陽イオンの効果を評価した。まずEDTAを含んだバッファーに交換することにより二価陽イオン濃度を減少させたところ、染色体の脱凝縮が誘起された。一方、同一の標本で高濃度の二価陽イオン(Mg2+及びCa2+)を含んだバッファーに交換すると、再び凝縮が起こった。この結果は蛍光顕微鏡観察、SRS顕微鏡観察の双方で得られた。以上から、二価陽イオンには染色体凝縮を促進する効果があることがわかり、さらにSRS顕微鏡の染色体研究への有効性も同時に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,新しい非線形光学顕微鏡を用いて細胞分裂時における核・染色体の構造変化について、これまでにない新しい知見を得ることを目的としているが,当初計画通り,本年度までに非線形光学顕微鏡により,染色体の二価陽イオンによる構造変化を観察することに成功した。また,ライブセルイメージングにおいては,油脂生産植物Jatropha curcasの細胞中の様々なコンパートメント,特に油脂貯蔵粒(オイルボディー)の無染色可視化に成功した。さらにはその脂肪酸組成についても主な二種類のものについては別々の信号として得ることに成功するという大きな成果をあげた。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は,本基盤研究の最終年度であり,これまで得られた知見を統合し、時系列情報を有する高精細なライブセルマップを無染色生細胞を対象として構築する。加えて各種染色体由来タンパク質の構造構築に対する機能をについての知見を得、タンパク質動態に基盤を置く、合理的染色体高次構造モデルを作製したいと考えている。
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