研究概要 |
我々は2007年にグルコース誘導体の位置選択的アシル化を発表した。この方法はグルコース誘導体の4つの水酸基の内、反応性の低い第2級水酸基上で排他的に反応を起こし、基質本来の反応性とは独立したほぼ完全な触媒主導の選択性を発現できる点が従来法にはない特徴である(JACS.2007,129,12890)。さらに本法の一般性獲得と天然物合成に向けた研究を行い、アシル化剤として種々の官能基を持つ酸無水物を用い、4位選択性が高度に保持されたグルコピラノースへの官能基導入法の開発に成功した。(JOC.2009,74,8802、Eur.J.Org.Chem.2010,5,827-831)。22年度は本法を用いる配糖体天然物mutifidoside類の全合成を行った。先ず、芳香族ケトアルデヒドのプロリン型触媒を用いる不斉分子内アルドール反応を鍵工程としてアグリコン部の合成を行った。このアグリコンのβ-選択的グリコシル化を行い、糖部分が無保護の配糖体前駆体の有機触媒を用いるグルコピラノースの4位選択的シンナモイル化を行った。このシンナモイル化は89%の位置選択性で進行し、mutifidoside A及びmutifidoside Bの触媒的位置選択的不斉全合成を達した。また、長鎖ジオールのモノアシル化を起こす触媒開発を行い、鎖長を認識しながら、モノアシル化を化学選択的に進行させる触媒を開発した。本法によるモノアシル化の選択性はリパーゼを用いる酵素法をも凌駕するものであった。本成果はAngew Chem Int Ed誌のHot Paperに採用された。
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