研究課題
C型肝炎などの慢性肝疾患時にも胆汁排泄輸送体のmRNA発現量は変化せずに輸送体の膜局在性の低下による胆汁うっ滞が報告されている。長期にわたる胆汁うっ滞は胆汁酸などの蓄積により、肝硬変・肝癌へと進行することから、その早期発見と治療法の確立は重要である。本年度においてはコア蛋白質発現トランスジェニックマウス(C型肝炎モデルマウス)における病変進行に関わる因子について検討すると共に、胆汁排泄輸送体の局在変化に関わるメカニズムについての検討を行った。肝炎が発症する加齢12ヶ月以前で非侵襲的に肝臓由来のROSを捕らえられている加齢8ヶ月のマウスにおいて、血中胆汁酸濃度の上昇が確認された。また、C型肝炎ウイルスコア蛋白質を発現しているヒト肝癌由来細胞株において、低濃度の鉄剤の負荷時に酸化ストレスの増悪が見られた。ヒトにおいてもC型肝炎の肝臓において鉄の蓄積が見られ、瀉血療法によりC型肝炎の進行を抑制することが知られていることから、肝臓での鉄の蓄積が酸化ストレスを増悪させていることが考えられたため、現在C型肝炎モデルマウスにおいて、鉄剤の長期投与を行うことで、更なる検討を行っている。また、グラム陰性細菌の毒素であり、胆汁うっ滞のモデルとして用いられるLiopopolysachalide(LPS)の投与を行い、胆汁排泄輸送体の局在変化に関わる因子として膜裏打ちタンパク質であるRadixinとの結合が重要な因子であることを明らかとし、更ヒト及びラット肝スライスを用いて、酸化ストレスがヒトにおいても胆汁輸送体の局在に影響を与えていることを明らかとした。これらのことから、本研究を遂行することで得られるC型肝炎モデルマウスでの検討結果をヒトに応用する際の重要な知見となることが期待され、今後に発展性のある研究結果が得られた。
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