C型肝炎などの慢性肝疾患時にも胆汁排泄輸送体のmRNA発現量は変化せずに輸送体の膜局在性の低下による胆汁うっ滞が報告されている。長期にわたる胆汁うっ滞は胆汁酸などの蓄積により、肝硬変・肝癌へと進行することから、その早期発見と治療法の確立は重要である。ヒトにおいてもC型肝炎の肝臓において鉄の蓄積が見られ、瀉血療法によりC型肝炎の進行を抑制することが知られていることから、肝臓での鉄の蓄積が酸化ストレスを増悪させていることが考えられたため、本年度においてはC型肝炎ウイルスコア蛋白質を発現しているヒト肝癌由来細胞株において、低濃度の鉄剤の負荷時におけるミトコンドリア機能に着目した検討を行った。その結果、コア蛋白質が発現している細胞株のミトコンドリア障害において低濃度の鉄剤の負荷に対する感受性がその非発現細胞よりも亢進していることが明らかとなった。また肝炎時における胆汁うっ滞の原因を解明することを目的として、そのモデルとして汎用されるLipopolysachalideの投与を行い、胆汁排泄輸送体の局在変化に関わる因子として膜裏打ちタンパク質であるRadixinとの結合が重要な因子であることを明らかとし、更にヒト及びラット肝スライスを用いて、酸化ストレスがヒトにおいても胆汁輸送体の局在に影響を与えていることを明らかとした。更に、Ethan DIGEを用いた2次元蛍光ディファレンシャル解析により胆汁輸送体の局在制御を担う可能性のある複数の蛋白質の同定に成功した。本年度の検討により得られたこれら結果は、本研究を遂行することで得られるC型肝炎モデルマウスでの検討結果をヒトに応用する際の重要な知見となることが期待され、今後に発展性のある研究結果である。
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