研究課題
本研究では、病原体センサーが細胞内感染を認識した後に、どのようにして恒常性維持機構であるオートファジーを誘導するのか、その分子機構を解明することで、細胞内寄生細菌に対する感染防御機構の一端を明らかにすることを目的としている。昨年度は、オートファジー誘導に必要とされる因子を同定するために行うゲノムワイドRNAiスクリーニングを確立した。すなわち、病原体センサーであるPGRP-LEを発現させたショウジョウバエS2細胞を用いて、21,306の転写産物に対して網羅的なRNAiによるノックダウンを行い、リステリア菌の細胞内増殖をモニターすることで、PGRP-LEによるオートファジー誘導に必要な因子を同定する系を確立した。今年度は、このゲノムワイドRNAiスクリーニングを開始し、継続している。その一方で、変性したタンパク質のオートファジーによる分解に関わることが示されているp62タンパク質のショウジョウバエホモログRef(2)Pに着目して研究を準めた。その結果、ref(2)P変異体では、細胞内寄生細菌であるリステリア菌の感染抵抗性が低下しており、ref(2)Pが細胞内寄生細菌に対する感染抵抗性の発現に重要であることが明らかとなった。その際、ref(2)P変異体の体液細胞内で、リステリア菌の細胞内増殖抑制が見られなかった。さらに、Ref(2)Pタンパク質ほ、PGRP-LEに依存して、細胞質内に感染したリステリア菌と共局在することが明らかとなった。これらの結果は、PGRP-LEが細胞質に感染したリステリア菌を認識し、Ref(2)Pタンパク質をそこに局在させることで選択的にオートファジーを誘導していることを示唆している。
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