研究課題
本グルタミン酸受容体GluRδ2がシナプス結合に必須であることを明らかにした小脳プルキニエ細胞シナプスに的を絞り、GluRδ2の細胞外領域あるいは細胞内領域に結合する分子をプロテオミクス解析により探索した。GluRδ2のN末端部分のみを結合させた磁気ビーズと小脳顆粒細胞とを共培養することのよりシナプス形成を誘導させ、クロスリンカーで処理することによりGluRδ2のN末端部分に結合するシナプス前蛋白質を単離し、網羅的に解析した結果、シナプス形成に関与する可能性を持つ膜蛋白質としてneurexin,PTPσ,FAT2を、小脳顆粒細胞終末から分泌されるCblnlを同定した。これらの蛋白質を細胞に発現させ、GluRδ2を発現させた細胞と共培養し、相互作用を検定した結果、GluRδ2はneurexinとCblnlを介して結合することを見いだした。培養細胞系でneurexinをノックダウンするとGluRδ2によるシナプス形成誘導が障害されることを示した。また、Cblnlを欠損した培養細胞でもGluRδ2によるシナプス形成誘導が障害され、Cblnlを添加することにより回復することを示した。同時に、Cblnlの誘導欠損マウスを作成し、Cblnlがシナプスの形成と維持の両者に必須であることを示した。Cblnl欠損マウス小脳にCblnl蛋白質を導入することによりシナプス結合が回復するが、GluRδ2細胞外領域あるいはneurexin細胞外領域の存在下ではCblnlによるシナプス形成能が阻害されることを明らかにした。これらの結果から、シナプス後部のGluRδ2はシナプス前部のneurexinと分泌蛋白質Cblnlを介して結合することによりシナプス形成を誘導することを明らかにした(Cell,2010)。本研究により、網羅的プロテオミクス解析による分子探索とin vivoシナプス機能解析系を組み合わせることにより、シナプス形成と機能に関わる鍵分子を探索することが可能であり、脳神経薬理学の新たな展開に貢献することが示された。
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