研究課題
本研究では、液性免疫応答におけるヘム代謝に焦点をあて、ヘムシグナルによる免疫応答制御という、今まで全く想定されていない研究分野を開拓する。具体的には、液性免疫応答を制御する転写因子群(Bach1およびBach2)がヘム受容体でもあることに着目し、ヘムによるBachの制御機構を明らかにする。さらに、ヘム非応答性Bach1およびBach2をデザインし、これらでノックアウトマウスのレスキュー実験を行い、その液性免疫応答の変化を比較解析する。そして、生体においてヘムが抗体産生や抗体クラススイッチ、さらには自然免疫を調節することを証明する。本年度は、Bach2とヘムの結合に関する生化学的解析をさらに追加し、論文レベルまでデータの精度をあげると共に、その知見を活用して構築したヘム非結合型Bach2を発現するトランスジェニックマウスを作出することを目指した。大腸菌で発現し、高純度に精製した各種Bach2断片の中でも、DNA結合ドメインの直上のヘム結合領域がドメイン様構造をとることを、タンパク質消化酵素の限定分解やCDスペクトルによりほぼ証明できた。並行して、この領域中の複数のシステイン残基に変異を導入することにより高親和性ヘム結合能はほぼ失われることを確定したので、このcDNAあるいは野生型cDNAをBリンパ球特異的プロモーター(CD19遺伝子由来)に連結した人工的遺伝子を構築した。そして、これら人工遺伝子を有するトランスジェニックマウスを作成した。来年度は、得られるトランスジェニックマウス(野生型あるいはヘム非結合型Bach2)をBach2ノックアウトマウスと交配し、Bach2ノックアウトマウスにおけるBリンパ球異常がどのように変化するかを調べ、ヘムの液性免疫における機能を探る。なお、実験結果の一部をまとめ、Blood誌にて論文を発表した。
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Blood
巻: 117巻 ページ: 5438-5448
EMBO J
巻: 29 ページ: 4048-4061
http://www.med.tohoku.ac.jp/org/medical/05/