研究実施計画の予定どおり、(1)PGC7によるDNA脱メチル化機構の解析、(2)PGC7の遺伝子発現におよぼす影響の解析、(3)PGC7の悪性腫瘍における機能解析、についての研究を展開した。 (1)PGC7によるDNA脱メチル化機構の解析:初期胚において、DNAメチル化が保護されるゲノム領域が、PGC7によってどのように保護されているか、その分子機構の解析をおこなった。修飾したペプチドに対する結合実験、種々の阻害実験、ヌクレアーゼアッセイ、免疫染色実験、など、多彩な実験をおこなった結果、PGC7は、ヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)を介してクロマチンに結合することが明らかとなった。また、メチル化シトシンをハイドロキシメチル化シトシンへと変換する酵素であるTet3が初期胚におけるDNA脱メチル化に重要な機能を有していること、さらに、そのTet3の細胞内局在を制御することによってPGC7は初期胚における能動的DNA脱メチル化において機能していること、を明らかにした。 (2)PGC7の遺伝子発現におよぼす影響の解析:PGC7をNIH3T3細胞に強制発現させ、遺伝子発現において特徴的な変化が生じるかどうかを検討した。二つのクローン、ならびに、一つのプールサンプルについての解析をおこなった。 (3)PGC7の悪性腫瘍における機能解析lB16メラノーマ細胞にPGC7を強制発現させたところ、その転移能が亢進することを見いだした。 以上のように、最終年度である今年度は、当初予定どおりに研究は進捗し、特に、(1)の研究は、Natture誌に掲載されることが決まった。
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