研究課題/領域番号 |
21249017
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊池 章 大阪大学, 医学研究科, 教授 (10204827)
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研究分担者 |
山本 英樹 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20372691)
佐藤 朗 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70464302)
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キーワード | Wnt / Wnt5a / Dvl / 細胞分裂期 / 前立腺癌 / MMP / 紡錘糸 |
研究概要 |
本年度はWntシグナルと癌との関連について下記のような結果を得た。癌は細胞周の異常に伴って生じることが知られている。Wntシグナル構成蛋白質のDvlの分裂期における局在を検討した。Dvlは主として、紡錘糸と中心体に局在した。また、ノコダゾールで紡錘糸を破壊すると、Dvlは染色体中央部に存在するキネトコアに局在した。Dvlをノックダウンすると、紡錘糸の軸が野生型に比して傾き、分裂した細胞の一つが接着面から離れる傾向にあった。また、Dvlは紡錘糸(+)端のキネトコアへの結合に関与した。すなわち、Dvlは微小管と細胞皮質およびキネトコアへの結合を促進することにより、細胞分裂極性を保つことが示唆された。さらに、Dvlは分裂期チェックポイントの制御に関する蛋白質のキネトコアへのリクルートに関与することが明らかになった。’これらの結果に一致して、Dvlをノックダウンすると、分裂期チェックポイントが働かなくなり、細胞周期制御が破綻した。このために、Dvlに異常があると、分裂期における染色体の分配が正常に行われなくても、細胞分裂が進行することが明らかになった。したがって、Dvlは他のWntシグナル分子と共に、異常が生じると癌化に結び付く可能性が示唆された。 さらに、昨年明らかにしたWnt5aと胃癌との関連に加えて、本年度はWnt5aと前立腺癌の関連について解析を行った。前立腺癌においてWnt5aと悪性化との関連を解析したところ、98例中30例(約30%)に高発現していた。Wnt5aはGleason scoreの高い症例ならびに血清PSA値の高い症例に有意に発現していた。また、Wnt5aが高発現している症例では、術後再発する確率が高いことが明らかになった。さらに、前立腺癌細胞株からWnt5aを除去すると、その細胞運動能と浸潤能が減弱した。Wnt5aは前立腺癌細胞において受容体Fz2を介して、PKCを活性化し、matrix metalloproteinase l (MMP1)の発現を促進した。したがって、昨年度報告した胃癌と同様に、Wnt5aは前立腺癌においても進行度や予後判定のマーカーになると考えられた。 来年度は本研究の最終年度であるので、Wntシグナルによる細胞応答制御を総合的に解析したい。
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