組織特異的遺伝子発現制御の中心的役割を果たすのは組織特異的エンハンサーである。Ad4BP/SF-1遺伝子は副腎皮質や生殖腺のステロイド産生細胞において発現するが、その発現は異なるエンハンサーによって制御されている。本研究では、副腎皮質において選択的に使用されるにおけるエンハンサー領域のクロマチン構造を明らかにし、その変換がエンハンサー選択を可能することを示すことで、副腎皮質の細胞分化メカニズムの一端を明らかにすることを目的とする。本年度は、副腎皮質由来のY1細胞を用い、全ゲノムを対象とするChIP-sequence法の確立、ならびにChIP-sequence法による解析を行った。本方法では次世代シークエンサーを用い、大量のデータが得られるため、データ解析においては情報生物学の研究者との共同研究も開始している。既に、Ad4BP/SF-1、ピストンH3K4のメチル化、H3K27のアセチル化に対する抗体を用いたChIP-sequence解析を行い、現在、得られたデータの処理を行っているところである。Ad4BP/SF-1の集積領域はゲノム中に数千箇所が存在し、これらの領域のヒストンの修飾状況と照らし合わせながら、潜在的なエンハンサー領域の同定を進めている。今後は、得られたデータをもとに、エンハンサー領域の普遍性と多様性の抽出、ならびにそれらのエンハンサー活性の生体における検討を、遺伝子改変動物の作製を通じ、行う予定である。
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