研究概要 |
ヒト乳癌、肺癌、膵癌、大腸癌あるいは骨軟部腫瘍からSide population (SP)法によりヒト癌幹細胞分画を分離した。これらはいずれも非SP分画細胞より100~10,000倍の高いin vivo造腫瘍性をSCIDマウスで見せた。DNAアレイによりこれらヒト癌幹細胞に選択的に発現する抗原解析を行ったが、以下の5つの抗原をヒト癌幹細胞抗原として同定した。それらは (1)- Or7cl (olfactory receptor family 7 subfamily C member 1) (2)- PCDH19 (protocadherin) (3)- Sox-2 (sex determining region Y-box 2) (4)- SMCP (Sperm mitochondria-associated cystein-rich protein) (5)- DNA JB8 (DnaJ (Hsp40) homolog, subfamily B, member 8) である。これらのいつれの抗原もヒト正常間葉系幹細胞には発現をみなかった。各々の免疫学的特性につき解析中であるが、(1)(2)は細胞面にも発現し抗体の標的にもなり得る分子である。興味あることに(1)(4)(5)は正常組織ではtestisにのみ発現を示すCace-Testis (CT)抗原の特徴をもつ。すなわち、CT抗原がヒト癌幹細胞抗原として重要な研究を占める可能性が示唆され、癌免疫治療の方向性に新たなパラダイムを与える可能性を意味した。特に(5)DNA JB8は免疫原性が高くin vivoで腫瘍の免疫学的拒絶を強く誘導することを確認し、ヒト癌幹細胞特異的ワクチンとしての期待がもたれた。
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