研究課題
微量の血清サンプルからのRNA抽出及び低密度アレイによる定量的マイクロRNA測定に関する実験条件の最適化し、さらに低密度アレイを用いた網羅的発現解析を進めた。その結果、健常人血清に比して膵臓癌症例において有意に高発現を示すマイクロRNAを4種類同定することに成功した。これらのマイクロRNAについて、個々にTaqManRT-PCR解析による検証を、健常者血清50サンプルと膵臓癌患者血清10サンプルを用いて行った。さらに、得られた解析データをもとに、これらのマイクロRNAを組み合わせた膵臓癌診断判別モデルの構築を進めた。weighted-voting法による判別モデルを作成し、リスクスコアにもとづいた診断システムとして完成させた。その結果、カットオフ値を超える高値を示した健常者は10%と良好な特異性を示した一方、膵臓癌症例の82.5%がカットオフを上回り(感度82.5%)、非常に高い感度が得られることが明らかとなった。特筆すべきことに、検討した膵臓癌症例には比較的早期のII期の症例も含まれていたが、全く遜色ない頻度で異常値として検出することができた。血清中に存在する蛋白に関する網羅的な定量発現解析を、安定同位体標識したレポーター試薬(iTRNQ試薬)による標識化とタンデム型質量分析装置を用いて進め、膵臓癌及び正常主膵管組織の新鮮凍結組織において発現を認めた約4000種類の蛋白からマーカー候補蛋白の探索を遂行した。その結果、高発現している候補蛋白の中の一つが膵臓癌細胞の生存に直接関わることを明らかとし、膵臓癌細胞が微小環境下で晒されている小胞体ストレスへの耐性の付与に関わっていることを明らかとした。
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