本研究は、過去の潜在性動脈硬化疫学研究の対象者(40-79歳男女約1500名)の追跡調査を2期6年で実施する予定の研究であり、動脈硬化の指標としてマルチスライスCTによる冠動脈石灰化指数の計測を予定していた。H21年度は第一期の初年であったが、当時使用していたCT機器が同年12月から廃止となることが決定したため11月時点で調査をいったん中断した(予算繰越の理由である)。平成22年3月後半より新しく導入された機器(64列マルチディテクターCT)の使用が可能となり、調査を再開した。平成22年度には繰越し分の対象者を含めて約250人の調査を終えた。 調査の内容であるが、上述のとおり動脈硬化の指標としてマルチスライスCTによる冠動脈石灰化指数に加え、エコーによる頚動脈の内膜中膜肥厚、腹部CTによる内臓および皮下脂肪面積測定、脈波伝道速度の計測などを行った。また空腹時採血による血清・血漿の保存、血糖、脂質を含む一般血液学的検査も行った。 本研究の対象集団は一般地域住民から無作為に抽出されており、日本人の一般集団代表性を有する点で意義深い。本研究にて追跡調査が完了すれば日本人の潜在動脈硬化の進展および疾患の発症・死亡をアウトカムとした予後予測因子を検討することが可能となり、今後の日本人の動脈硬化関連疾患予防の上で、公衆衛生学および臨床医学上重要な知見を提供しうると確信している。 また、ベースライン調査時点から共同で研究を継続している米国の疫学調査とのさらなる比較検討を考え、これら米国研究者との打ち合わせ(平成23年3月於アトランタ)および施設見学(同3月末、於ピッツバーグ大学)を行った。これとは別に米国の同様な疫学研究であるMESAとの冠動脈石灰化指数に関する比較可能性研究を国際学術誌に投稿し採択された(雑誌名Int J Cardiol.掲載2011 Feb 28 PMID:21367466)。
|