研究課題/領域番号 |
21249047
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
東田 道久 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (20207525)
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研究分担者 |
小松 かつ子 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (50225570)
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キーワード | 補中益気湯 / 学習性無気力動物 / セロトニン2C受容体 / ツメガエル卵母細胞 / STAT3 / BNIP-3 / 十全大補湯 / 3D-HPLC |
研究概要 |
和漢薬の治療概念に基づいてうつ病を細分類し、その関連する生体内分子の発見と対応する治療薬の開発をめざして本研究を立ち上げた。計画初年度である本年度は、気虚に用いられる代表的補気処方である「補中益気湯」の作用を、同じく補気処方である「十全大補湯」との構成生薬との関連も含めて検討した。1)抗うつ効果を評価するモデル動物についての検討を行い、「学習性無気力動物モデル」の評価法に手を加えることにより、感度のよいシステムに改良した。このモデルを用いて、「補中益気湯」が抗うつ薬として機能することを実証した。またこのモデル動物の脳中での遺伝子発現変化をとらえることにより、うつ病初期にSTAT3系が、慢性移行期にBNIP-3が関与する可能性を示した。2)多くの抗うつ薬がセロトニン2C受容体に作用することに基づき、「補中益気湯」の同受容体への作用を、ツメガエル卵母細胞再構成系による電気生理学的検出法により検討し、構成生薬・升麻中の微量な成分4種のいずれかが活性化に寄与することを見出した。しかしながら、和漢薬の概念に照らし合わせると、升麻は「補薬」ではないため、升麻により抗うつ効果がもたらされることは期待できない。多くの抗うつ薬は同受容体に対して抑制的に働くことや、「十全大補湯」は応答を示さなかったことから、「補中益気湯」の抗うつ効果は「十全大補湯」と共通する構成生薬5種の中に含まれると推定され、実際、共通生薬群処置により弱いながら電流応答抑制が観察された。これらのことは「補中益気湯」中に、「補中」すなわち消化器系に対する直接的作用成分と、吸収・代謝・血液脳関門透過を経ての「益気」の作用成分とが共存しており、しかも両作用は単離した場合、相反する作用である可能性が見出された。次年度以降はその詳細と成分の単離、fMRIを用いた解析、他の和漢処方の作用の検討に着手する。
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