研究課題
核内受容体である、PPARには、α、γ、δの3種類のサブタイプが存在し、PPARδアゴニストは、抗炎症作用や抗動脈硬化作用があることが報告されている。一方、PPARδの腎臓における機能やそのアゴニストの糖尿病性腎症への治療効果は不明である。我々はPPARδアゴニストが糖尿病性腎症の進展機序である慢性炎症に作用して治療効果を発揮するのではないかという仮説をたて、糖尿病動物モデル(ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウス)を用いて、核内受容体PPARδアゴニスト(GWO742)の糖尿病性腎症への治療効果を検討した。C57BL/6マウス(雄、8週齢)を(1)非糖尿病群(以下C群)、(2)非糖尿病+GWO742投与群、(3)糖尿病群(以下D群)、(4)糖尿病+GWO742投与群(以下G群)の4群に振り分け、糖尿病誘発後にGWO742を8週間経口投与した(1mg/kg/日)。糖尿病誘発前、糖尿病誘発後4週、8週の時点で体重測定、血圧測定、蓄尿検査を行い、糖尿病誘発後8週でsacrificeを行った。腎症の治療効果は、アルブミン尿、腎機能に加えて、腎臓組織におけるメサンギウム基質の面積率(Mesangial matrix index ; MMI)、IV型コラーゲンの発現、糸状体内マクロファージの浸潤を観察した。またPCR法にて炎症性サイトカインの遺伝子発現を検討した。GWO742の投与により、体重、血圧、HbAlcに有意差を認めなかったが、糖尿病誘発8週の時点でG群マウスはD群マウスと比較し尿中アルブミン(μg/day)の有意な減少をみとめた(C群:11.1±0.9、D群:91.9±13.2、G群:39.3±2.6)。腎臓組織の観察ではD群マウスにみられるMMI(%)の増加がGWO742投与により抑制され(C群:9.18±0.40、D群:12.14±0.37、G群:9.57±0.17)、IV型コラーゲンの発現増加も抑制された。さらに糸状体内マクロファージの浸潤(個/糸状体)も抑制された(C群:0.23±0.02、D群:2.71±0.09、G群:1.80±0.08)。また炎症性サイトカインの遺伝子発現の検討では、腎臓においてMCP-1、CD14のmRNAの発現が減少していた。PPARδアゴニストは糖尿病性腎症において炎症を抑制することで、腎症を改善させることが示唆された。
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