研究課題
初年度において我々は骨髄中に存在するnon-myelinating Schwann細胞がマウス造血幹細胞ニッチを構成する細胞の一つであることを明らかした。22年度はヒト造血幹細胞及びヒト骨髄環境を対象に研究を行った。目的としては、マウスと同様のメカニズムでヒト造血系ホメオスタシス維持の関与について解析を進めた。マウスを用いた実験においてTGF-βシグナルは造血幹細胞内のチロシンリン酸化シグナル伝達物質を不に制御することにより造血幹細胞を冬眠状態に誘導できた。また興味深いことに造血前駆細胞においてTGF-βシグナルは早期のアポトーシスを誘導することも確認できた。我々はヒト臍帯血中の造血幹/前駆細胞マーカーであるCD34陽性、CD38陰性分画の細胞をフローサイトメータにより分離し造血幹細胞の細胞分裂を促すサイトカインであるSCFとTPOを添加した培養液中で培養した。その結果、約1%のCD34陽性、CD38陰性分画の細胞が冬眠状態を維持でき、残りの細胞はアポトーシスを起こした。これらの結果から臍帯血中に存在するCD34陽性、CD38陰性細胞の約1%がマウスと同様の冬眠維持機能を持っている未分化な造血幹細胞であることが示唆された。我々はTGF-β存在下で冬眠状態を維持できる細胞こそが造血幹細胞であるのではないかと考え、これらの細胞の本体を明らかにするべく研究を進めている。ヒト骨髄環境の解析では、ヒト骨髄生検を採取しSchwann細胞のマーカーであるGFAPタンパク質を抗体により免疫染色を行った。実際にヒト骨髄生検の組織においてもマウスと同様のGFAP陽性細胞が確認された。これらのデータはマウスと同様にヒト造血幹細胞においてもニッチ細胞がnon-myelinating Schwann細胞である可能性が示唆され、将来の幹細胞移植や白血病幹細胞の治療に向けて重要な治験が得られたと考えている。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件)
JBiol Chem
巻: 286 ページ: 4760-71
Exp Hematol
巻: 39 ページ: 351-359
J Cln Invest
巻: 120 ページ: 179-190
Blood
巻: 115 ページ: 4302-12
Cell Stem Cell
巻: 6 ページ: 279-286
Cell Cycle
巻: 9
巻: 38 ページ: 696-706
J Exp Med
巻: 207 ページ: 1173-1182
Mol Reprod Dev
巻: 77 ページ: 474
Oncogene
巻: 29 ページ: 4157-69
Clin Cancer Res
巻: 16 ページ: 3825-3831
Lab Invest
巻: 17 ページ: 271-5
Curr Opin Hematol
巻: 17 ページ: 271-275
巻: 4 ページ: 177-87