1)高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染性を決定する細胞膜上の新規宿主プロテアーゼMSPL/TMPRSS13を発見した。プロテアーゼの遺伝子を持たないインフルエンザウイルスが感染性を示すには、ウイルス膜蛋白のプロテアーゼでヘマグルチニン(HA)が限定分解され、膜融合活性が発現されなくてはならない。高病原性鳥インフルエンザの2種類の切断配列の中で、Furinは1種類を切断するがもう一つの切断配列を認識しない。我々が見出したMSPLとTMPRSS13は、全ての高病原性鳥インフルエンザウイルスのHAを認識して感染性を出現させる事を見いだした。これを証明するため、京都で烏から採取された高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスを用いて、ウイルス増殖に及ぼすMSPL/TMPRSS13の作用を明らかにし、J.Viiologyに発表した。 2)多臓器不全の発症機序:インフルエンザ感染による死は多臓器不全の結果である。多臓器不全は、感染局所で生じた炎症性サイトカインにより全身臓器の異所性膵TrypsinとMMP-9が異常増加した結果による組織破壊と、増加したTrypsinによる細胞機能の変化、ミトコンドリア膜電位とATPの産生低下が原因と考えられる。これらの関連をインフルエンザウイルスーサイトカインープロテアーゼサイクル説として、J.Infect. Dis.誌に発表した。さらに治療法として、ATP増加を導く代謝的治療法、抗サイトカイン療法、抗酸化療法、抗プロテアーゼ療法の検討を進めている。
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