研究概要 |
統合失調症の一卵性双生児不一致例を対象とした神経画像・ゲノムサンプルの収集を昨年に引き続き行った(Todai Twin Prolect with Integrative Neuroimaging ; Todai-TWIN ; http://npsy.umin.jp/study/exam.html)。これらの双生児や健常者を対象に、阿部修氏との連携により、マルチモダリティ神経画像(3テスラfunctional MRI、構造MRI、MR spectroscopy [MRS], diffusion tensor imaging [DTI],近赤外線スペクトロスコピー[NIRS]、脳磁図[MEG])を計測し、神経伝達物質関連遺伝子の中間表現型を同定した。具体的には、脳MRIから得られる海馬・扁桃体体積と、神経伝達物質関連遺伝子多型の関係を見ることにより、MRI局所脳体積指標が中間表現型として適切かどうかを検討した。その結果、グルタミン酸NMDA受容体α2サブユニット遺伝子(GRIN2A)多型と海馬体積の有意な関連を認めた。このことは、MRIで計測される海馬体積がグルタミン酸神経伝達関連遺伝子の中間表現型として有用であることを示唆するものである。 さらに、統合失調症一卵性双生児不一致例における遺伝子発現、エピジェネティクス解析を理化学研究所・加藤忠史氏、東京大学医学部附属病院精神神経科・垣内千尋氏との連携で行い、特定の遺伝子におけるmRNA発現やDNAメチル化の違いなどを同定する作業を継続した。統合失調症一卵性双生児不一致例の血液サンプルを用いた網羅的遺伝子発現解析から、アドレノメジュリンのmRNAが統合失調症-卵性双生児において健常co-twinに比べて有意に高発現していることを見出した。その結果を踏まえ、アドレノメジュリンを過剰に発現する遺伝子改変マウスの作成を開始した。
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