一卵性双生児不一致例を対象とした神経画像・ゲノムサンプルの収集を昨年に引き続き行い(Todai Twin Project with Integrative Neuroimaging ; Todai-TWIN ; http://npsy.umin.jp/study/exam.html)、成人双生児62ペア、小児双生児44ペアからデータを得た。これらの双生児に対し、マルチモダリディ神経画像を計測し、神経伝達物質関連遺伝子の中間表現型を同定した。具体的には、統合失調症におけるグルタミン酸神経伝達系の異常を反映するmismatch negativity(MMN)をMEGを用いて計測したところ、一卵性双生児の一致率(intraclass correlation coefficient ; ICC)は0.74(p<0.001)、二卵性双生児の一致率は0.36(p=0.103)であり、有意な遺伝性を有する傾向が示された。このMMNは、グルタミン酸神経伝達系関連遺伝子で統合失調症との関連が指摘されてきたGRM3多型との有意な関連を示した。このことから、MMNが統合失調症の中間表現型として有用であることが示唆された。 さらに、統合失調症の前頭葉機能障害を反映する近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による語流暢性課題施行時のoxy-Hb濃度変化を計測したところ、一卵性双生児のICCと二卵性双生児のICCが有意に異なる、すなわち遺伝性を示す領域が、左下前頭回付近に認められた。このことは、NIRSによる前頭前野機能計測が統合失調症の中間表現型として有用な指標であることを示唆している。
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