研究概要 |
本研究はこれまで我々が開発してきた自己組織再生型人工複合材料を用いて胸部外科領域の臨床で安全に使用し得る代用気管を開発することを目的とした。 気管は気道という外界と生体との接点に位置するため、感染や痰の貯留などきわめて厳しい条件下に置かれる。このため1940年代から始まった人工物による気管の再建研究に於いても、臨床に安全に使い得る人工気管は世界的にも皆無であった。 本研究においては平成21年度にコラーゲン部分の改良で代用気管の生体親和性の向上と改良を行い胸部外科領域での置換に耐え得る代用気管の完成を目指すとともに、上皮化の促進のために組織幹細胞の応用を、そして将来の適応拡大も視野に入れて幹細胞の応用も検討した。特に大型動物実験のためのビーグル犬iPS細胞を世界に先駆けて樹立できたのは大きな成果であった。 ビーグル犬を使った動物実験を続け、コラーゲンに組織幹細胞(MSC)や自己骨髄穿刺液を手術時に用いると人工気管内面の上皮化が促進でき、細口径のチューブで左主気管支が置換可能なこと、さらに人工気管支内面を生体内分解性のポリマーでコーティングすることにより手術成績が向上することを確認した。 ビーグル犬のiPS細胞の樹立では、まずiPS細胞に導入する4つの因子Oct3/4,Sox2,Klf-4,c-Mycの分離とレトロウイルスベクターへのサブクローニングも完了した。それからビーグル犬胎児の線維芽細胞に導入した。
|