研究課題
各種小児用補助循環システムの研究開発を進めた。1)PCPSシステムについては、本年度は世界初の動圧浮上方式非接触回転型ディスポーザブル遠心ポンプを新規開発するとともにシステムに組み込み、長期動物実験を行った。この遠心ポンプは羽根車が非接触で浮上回転するため機械的接触部を持たず、長期耐久性と優れた抗血栓性を実現する。充填量は15ccと極めて小型ながら最大発生圧力700mmHgと優れたポンプ性能を有しており、開心術時体外循環のみならず、長期間ECMO/PCPSやBridge-to-decision目的の左心バイパスシステムなど様々な補助循環システムに応用できる。全血液接触面は我々が開発したT-NCVCコーティングを施し、成山羊(n=3)に対して完全ヘパリン非投与下(ACT<150秒)で4週間の連続使用を行ったところ、全例で予定期間の灌流を達成し、人工肺流入出部には微量の血栓形成を認めたものの、連続4週間まではヘパリン非投与下連続灌流が可能と考えられた。2)体外設置式空気圧駆動型VADについては、国循型の小児用拍動流型VAD(M型)の臨床使用を再度可能とすべく改良・評価を進めた。人工弁はMedtronic Hall 21mmとし、T-NCVCコーティングを施して抗血栓性を高めて長期動物試験を行った。その結果、成山羊(n=2)に対してワーファリンによる軽度の抗凝固療法施行下で3ヶ月間の左心補助を行い得、共に予定期間の連続灌流を問題なく達成し臨床投入が見込まれる段階となった。3)乳児用遠心式VADに関しては、茨城大学との共同研究開発により現在2次試作を制作中である。4)昨年から着手した動圧軸受け技術を用いた超小型埋込式軸流型補助人工心臓の小児用改良にていては、小児用としてのインペラ再設計が完了し、試作装置により模擬循環回路での駆出性能評価を行ったところ、設計通りの性能を得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
小児用PCPSシステムの開発に関しては、低充填量』(147ml)の回路に加えて、動圧浮上方式の非接触回転型ディスポ遠心ポンプの開発を達成し、1ヶ月のヘパリンフリーPCPS長期動物試験を連続3例成功させたこと、小児用空気駆動補助人工心臓は再製品化の最終段階に進んだこと、などは当初予定を凌駕する進捗度であるが、他方最も困難な開発と予測されていた乳児用遠心型補助人工心臓の開発は、現在2次試作の段階で、動物実験レベルまで到達していない。しかしながら、動圧軸受け方式体内埋込み型補助人工心臓の小児用モデルの開発については、開発開始1年未満ですでに一時試作の性能試験を実施するなど予想以上の進捗をみせている。すなわち、多くは予定以上の進捗状態を示しているものの、一部では当初予定に達していない部分もあるということで、これらを総合的に判断して「おおむね順調に進展している」という総合評価を下した。
本研究課題は研究期間5年のうち3年が経過した。この間、高リスク医療機器の研究開発・前臨床応用という課題内容を考慮すると、学術的には比較的良好な成果をあげるごとができたものと考える。しかしながら、本課題が最終的に目指すところは臨床応用・製品化であり、あくまで各開発対象の実用化に徹底的にこだわった推進方策を維持する予定である。実際に、小児用PCPSシステムや小児用空気駆動補助人工心臓は製品化前の最終段階に入っているし、世界初の動圧浮上方式非接触回転型ディスポーザブル遠心ポンプは、現在薬事承認の申請準備を進めており、半年~1年後の製品化達成が見込まれる。また、このポンプについては、埋込み型補助人工心臓の普及に伴い増加すると考えられるBridge-to-Decisionデバイスとしての応用展開も進めており、このポンプを用いた左心バイパスシステムは、厚生労働省早期探索的臨床開発拠点整備事業の中隔シーズとして、2年以内の医師主導治験の実施を目指している。これらの開発対象について遅滞なく順次臨床応用・製品化を進めていくためには、研究開発そのものに加えて開発協力企業・製造販売企業等との強固な連携体制の維持と運用が不可欠であり、求心力をもって目標への過程を着実に進めていきたいと考えている。
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