研究課題/領域番号 |
21249076
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
巽 英介 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (00216996)
|
研究分担者 |
妙中 義之 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 副所長 (00142183)
増澤 徹 茨城大学, 工学部, 教授 (40199691)
|
研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
キーワード | 小児重症心不全 / 補助循環 / 機械的循環補助 / 補助人工心臓 / 経皮的心肺補助 / 抗血栓性 / VAD / PCPS |
研究概要 |
各種小児用補助循環システムの研究開発を進めた。1)PCPSシステムについては、昨年度から世界初の動圧浮上方式非接触回転型ディスポーザブル遠心ポンプを新規開発してシステムに組み込み、長期動物実験を続けた。この遠心ポンプは羽根車が非接触で浮上回転するため機械的接触部を持たず、長期耐久性と優れた抗血栓性を実現する。充填量は15ccと極めて小型であるが、最大発生圧力700mmHgと優れたポンプ性能を有しており、開心術時体外循環のみならず、長期間ECMO/PCPSやBridge-to-decision目的の左心バイパスシステムなど様々な補助循環システムに応用できる。全血液接触面は我々が開発したT-NCVCコーティングを施し、成山羊を用いた完全ヘパリン非投与下(ACT<150秒)での4週間連続使用を安定して達成した。2)体外設置式空気圧駆動型VADについては、国循型の小児用拍動流型VAD(M型)の臨床使用を再度可能とすべく、引き続き改良・評価を進めた。T-NCVCコーティングを施して抗血栓性を高めて長期動物試験を行った結果、成山羊に対してワーファリンによる軽度の抗凝固療法施行下で3ヶ月間の左心補助を安定して行い得(PMDA提出用GLP準拠試験)、現在医師主導臨床試験および薬事申請(一部変更申請)の準備段階となっている。3)乳児用遠心式VADに関しては、茨城大学との共同研究開発により現在3次試作を制作中である。4)一昨年から着手した動圧軸受け技術を用いた超小型埋込式軸流型補助人工心臓の小児用改良にていては、小児用としての3種類のインペラ設計が完了し、試作装置により模擬循環回路での駆出性能評価を行ったところ、すべて設計通りの性能を得ることに成功した。その中から1種類を選定し、さらに溶血試験で十分な耐溶血性能を有することも確認した。本年度はin vivo試験に取り組む予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児用PCPSシステムの開発に関しては、動圧浮上方式の非接触回転型ディスポ遠心ポンプの開発を達成し、1ヶ月のヘパリンフリーPCPS長期動物試験を連続3例成功させたこと、また遠心ポンプ単体では1年以内の製品化の目処が立ったこと、小児用空気駆動補助人工心臓は再製品化の最終段階に進んだこと、などは当初予定を凌駕する進捗が得られた。一方で、最も困難な開発と予測されていた乳児用遠心型補助人工心臓の開発は、現在3次試作の段階で、動物実験レベルまで到達していない。逆に、動圧軸受け方式体内埋込み型補助人工心臓の小児用モデルの開発については、開発開始2年未満ですでに長期動物試験準備段階に進展するなど予想以上の進捗をみせている。このように多くは予定以上の進捗状態を示しているものの、一部では当初予定に達していないものもあり、これらを総合的に判断して「おおむね順調に進展している」という総合評価を下した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は研究期間5年のうち4年が経過して、平成25年度は最終年度にあたる。本研究課題は、高リスク医療機器の研究開発・前臨床応用という課題内容を有するものであり、学術的には予想以上の成果をあげることができた。その一方で、本課題が最終的に目指すところは臨床応用・製品化であり、本研究で一貫して述べてきたように、あくまで各開発対象の実用化に徹底的にこだわった推進方策を本年も維持する予定である。実際に、小児用PCPSシステムや小児用空気駆動補助人工心臓は製品化前の最終段階に入っており、世界初の動圧浮上方式非接触回転型ディスポーザブル遠心ポンプは、現在薬事承認の申請準備を進めており、数ヶ月以内の薬事申請、1年後くらいの製造承認獲得(製品化達成)が見込まれる。また、このポンプについては、埋込み型補助人工心臓の普及に伴い増加すると考えられるBridge-to-Decisionデバイスとしての応用展開も進めており、このポンプを用いた左心バイパスシステムは、厚生労働省早期探索的臨床開発拠点整備事業の中隔シーズとして、1年半後の医師主導治験の実施に向けて確実に準備を進めている。これらの開発対象について遅滞なく順次臨床応用・製品化を進めていくためには、研究開発そのものに加えて開発協力企業・製造販売企業等との強固な連携体制の維持と運用が不可欠であり、引き続き求心力をもって目標への過程を着実に進めていきたいと考えている。また、本研究課題終了後も、全ての開発対象がスムーズに臨床応用・製品化され、さらに日本製の高機能なハイリスク治療系機器が世界に向けてグローバル展開される先鞭となるように、継続的に活動を行って行く予定である。
|