研究課題
周術期に頻用される吸入麻酔薬の作用機構と周術期における遺伝子発現変化の分子機構について検討した。1.亜酸化窒素の鎮痛機序ノックアウトマウスあるいは阻害薬を用いた検討により、亜酸化窒素の鎮痛作用には、オピオイド受容体ファミリーに属するκオピオイド受容体およびノシセプチン受容体が関与する可能性を示した。2.全身麻酔と低酸素誘導因子を介するエリスロポエチン(EPO)発現EPOは、主として腎臓において産生される赤血球増生因子であるが、脳においても虚血や低酸素に反応して発現し、神経保護に重要な機能を有しうる。我々は、全身麻酔が低酸素下での脳内EPO発現に与える影響について検討した。低酸素による脳内EPO発現誘導は、イソフルランにより濃度依存的に有意に抑制された。一方、腎臓における低酸素下のEPO発現誘導は全身麻酔の影響を受けなかった。脳におけるEPO抑制機序として、低酸素下にEPOを誘導する転写因子hypoxia-inducible factor(HIF)-2の脳内活性が、イソフルラン投与下で有意に抑制されることが確認された。3.硫化水素(H_2S)が低酸素誘導性遺伝子応答に及ぼす影響H_2Sは、臓器虚血耐性の獲得を促し臓器保護効果を有し、HIF-1は低酸素下で活性化して様々な低酸素誘導性遺伝子応答を担う転写因子である。我々は、H_2Sが低酸素下HIF-1活性化に及ぼす影響について検討した。Hep3B細胞、SH-SY5Y細胞において、H_2Sは用量依存性に低酸素誘導性のHIF-1α細胞内蛋白質発現量を抑制し、HIF-1の標的遺伝子であるglucose transporter-1、vascular endothelial growth factorの発現誘導を抑制した。低酸素下におけるH_2SによるHIF-1活性抑制はHIF-1α分解促進によると考えられる。
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