研究課題/領域番号 |
21249085
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森川 康英 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (90124958)
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研究分担者 |
星野 健 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70190197)
渕本 康史 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (40219077)
池田 均 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10326928)
福島 敬 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30323299)
太田 茂 滋賀医科大学, 医学部, その他 (40127014)
細井 創 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20238744)
仁尾 正記 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70228138)
福澤 正洋 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (60165272)
滝田 順子 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00359621)
黒田 達夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60170130)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 横紋筋肉腫 / cancer stem cell / SP細胞 / iPS / 小児がん |
研究概要 |
[臨床試験]平成24年4月をもって低リスク群臨床試験A,Bが症例登録を終了した。中間リスク群試験40例の暫定解析の結果、PFSは1年91.9%,3年75% となり、OSは1年100%,3年86.5%であった。高リスク試験の3年PFS は47.1%(Group III 54.5%, Group IV 43.5%)、3年OSは70.6%(Group III 72.7%, Group IV 69.6%)であった。これらの成績は暫定的な結果であるが、これまでの米国IRSGの成績に劣らないものであり、今後の臨床への展開が期待される。 施設病理診断と中央病理診断の一致率は試験開始以来の集計で73.6%であった。キメラ遺伝子(PAX3,7-FKHR)は胞巣型で76%、胎児型で 0%の検出であった。病理組織診断がキメラ遺伝子解析により変更された症例は無かった。 [基礎研究]初発、転移・再発例を含むRMS17例(胞巣型8例、胎児型7例)を用いて、次世代シークエンサーによるexom解析を行った。RMSにおける腫瘍特異的な変異は成人がんと比較すると全体として少数であり、1検体につき平均8.3個であった。RAS、p53など既知の変異に加えて、新規の細胞シグナル経路の異常が複数例で検出された。全ゲノム解析による初発、再発・転移巣では、それぞれ共通する変異に加えて、独立した変異も散見され、がん細胞集団進化の機序が示唆された。また、筋特異的microRNAであるmiR-206が横紋筋肉腫患児の血清診断に応用可能であることを証明し、解析を続行した。血清中のmiR-206の発現は、非横紋筋肉腫症例に比して、横紋筋肉腫症例において有意に増加しており(p<0.01)、感度0.809、特異度0.893であった。血清miR-206発現の定量は術前診断、治療反応性・再発のモニタリングに有用であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[臨床試験]我が国初の小児固形腫瘍に対する臨床試験として開始されたJRSGによる4つの臨床試験は、試験期間の延長があったものの24年度に終了した。中間リスク群試験および高リスク群試験については研究実績概要に述べたごとくこれまでの海外の成績に劣らない成績を得ている。中央病理診断は新たな層別化の可能性を示唆する所見は、次期試験の参考となる。また、病理組織分類基準をCAP分類へ今後移行させる為の準備も終了している。中間リスク群、高リスク群については次期臨床試験に関するプロトコールコンセプトが採択され、次年度に新規臨床試験のプロトコールが作製されることとなった。 [基礎研究]次世代シークエンサーによるexom解析では新規の細胞シグナル経路の異常が複数例で検出され、全ゲノム解析では共通する変異に加えて、独立した変異も散見され、がん細胞集団進化の機序が示唆され、初期の目的を概ね達成している。 また、筋特異的microRNAであるmiR-206が横紋筋肉腫患児の血清診断に応用可能であることを証明し、実際の臨床に応用しつつある。 一方、RMS腫瘍幹細胞の採取が行われ、幹細胞マーカーの検討や薬剤感受性についての検討が行われているが、当初目的とした幹細胞のリプログラミングには 至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度となるが、これまでの実績をふまえて更に研究を発展させる。最終年度ならびに将来の研究推進のために以下を計画したい。 1.【JRSG I 最終解析】中間リスク群、高リスク群の最終解析を今年度中に終了させる。プライマリエンドポイントである3年無増悪生存割合、セカンダリエンドポイントに加えてキメラ遺伝子陰性の胞巣型RMSの予後解析を通じて新たな層別化の可能性を探る。また、放射線治療および外科治療ガイドラインの観点から試験結果の解析を行う。 2.【新規臨床試験(JRSG II)の構築】臨床試験に患者登録を行っている施設は40施設程度であったため、今後の我が国における小児固形腫瘍の臨床試験は40施設程度の限定された施設で行われるべきであり、JRSG IIではより限定的な施設を対象に臨床試験を構築する。中間リスク群、高リスク群にたいする次期臨床試験のプロトコールコンセプトは既に承認されており、今後参加施設に対する説明と意見交換を行った後にプロトコール作成に着手する。次期試験では中央病理診断に以下の組織分類の新判定基準を採用する。1)CAP (College of American Pathologists) Protocol分類2)Prognostic IHC phenotype (HMGA2発現、myogenin陽性率)の採用 3.【基礎研究】腫瘍幹細胞についての研究は更に推進する必要がある。今後化療前後でのCD44v8-10、CD13、CD133、EpCAMの表出に変化があるかを評価する。また、抗腫瘍分子TRAILを誘導する未熟NK細胞の標的となりうるかを検討する。 次世代シークエンサーによるexome解析により、細胞増殖シグナル経路に関与する複数の遺伝子がその発症に関与している可能性が示唆されたため、今後さらに大規模なコホートにおける変異の検証を試みる。
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