研究概要 |
女性優位の性差が最も顕著なシェーグレン症候群において自己免疫病変の発症と唾液腺アポトーシスが密接な関連性を有し、唾液腺特異的にエストロゲン欠乏に依存してアポトーシスを誘導する因子としてRb関連タンパクRbAp48を同定した(Mol.Cell.Biol.26:2924,2006)。RbAp48遺伝子導入トランスジェニック(TG)マウスにおいてシェーグレン症候群に極めてよく類似した病変が自然発症する新たな疾患モデルを確立した(J.Exp.Med.205:2915,2008)。本研究ではこの新たに開発された疾患モデルの詳細な病態解析によって生体内における免疫制御システムの全体像の解明を試み、革新的治療法の研究開発を開始した。本TGマウスでは唾液腺上皮細胞にRbAp48を介してIFN-γの産生が誘導されることによってMHCクラスII分子の異所性発現が認められることに加え、唾液腺上皮細胞からIL-18が産生されることにより、末梢トレランスの破綻に至る可能性が示された。本年度は実験的治療としてRNA干渉法を用いたRbAp48を標的とするノックダウンによる点眼療法を実施したところ、病態抑制効果が確認されている。また、病態形成と関連して所属リンパ節のCD4陽性T細胞においてDUSP1,LTbRの強発現が認められ、組織破壊に関与するエフェクター機能獲得の分子機構の一端が明らかにされた。多くの自己免疫疾患が女性優位であることはよく知られるが、エストロゲン欠乏と個別の疾患発症との関連について詳細な分子機序は不明である。Rb関連タンパクRbAp48がエストロゲン欠乏に依存して外分泌腺臓器特異的にアポトーシスを誘導し、その遺伝子導入マウスがヒトシェーグレン群に酷似した病態を示すことから革新的治法の更なる研究開発にとって好適な動物モデルである。
|