研究概要 |
新規疾患モデルを用いた自己免疫疾患発症機序の解明を目指すために、エストロゲンを起点とした自己免疫疾患発症機序に関連して、エストロゲン合成酵素として知られているアロマターゼ遺伝子欠損マウスを用いて、自己免疫疾患における標的臓器の変化を検討した。アロマターゼ遺伝子欠損マウスでは涙腺、唾液腺に限局した炎症性病変が加齢的に観察された。また、アロマーターゼ遺伝子欠損マウスの唾液腺組織において、MHC classIIを制御する転写因子であるCIITAのmRNA発現が対照マウスに比較して、有意に上昇していることが判明した。この所見はRetinoblastoma-associated protein (RbAp)48トランスジェニックマウスで得られた結果と一致していた。一方、本年度の目的及び計画に記されている通り、カテプシンと自己免疫疾患との関連性を明らかにするために、自己免疫性糖尿病(I型糖尿病)の疾患モデルであるNODマウスを用い、カテプシンLが末梢CD8陽性T細胞の細胞障害活性に関連していることを明らかにした上で、カテプシンL阻害剤やカテプシンLのRNA干渉法(siRNA)を応用することにより、自己免疫性糖尿病の実験的治療法を確立した(PLoS One 5:e12894,2010)。加えて、インビボでのsiRNAを効率よく導入するために、アテロコラーゲンあるいは合成コラーゲンの応用に関する実験的研究を実施した(Dev Growth Differ 52:339,2010,53:48,2011)。RbAp48、のsiRNAによるアテロコラーゲンを応用したシェーグレン症候群疾患モデルへの点眼治療法を試みた結果、予備的検討からsiRNA点眼により有効な治療効果の可能性が確認された。さらに現在、エストロゲン、アロマターゼを中心とした内分泌システムと自己免疫疾患発症との関連性に焦点を当てて、新規革新的治療法や診断法の開発に向けた研究を実施中である。
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