研究課題/領域番号 |
21251010
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
松藤 和人 同志社大学, 文学部, 教授 (90288598)
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研究分担者 |
林田 明 同志社大学, 理工学部, 教授 (30164974)
渡辺 満久 東洋大学, 社会学部, 教授 (30222409)
加藤 真二 奈良文化財研究所, 研究員 (20261125)
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キーワード | レス-古土壌編年 / 東アジア旧石器編年 / 国際共同研究 / 学際研究 / アジアモンスーン変動 / 萬水里遺跡 / 候家窰遺跡 / 砂原遺跡 |
研究概要 |
平成23年度は、年度研究実施計画にもとづき中国河北省泥河湾盆地の地質・地形調査並びに侯家窰遺跡出土資料調査、韓国萬水里遺跡出土の資料調査を実施した。いずれも中国・韓国での基準遺跡として信頼できる地質年代の把握、グローバルな年代尺度としての海洋酸素同位体比編年(MIS)に同期したレスー古土壌編年に沿った石器群の年代的位置づけと評価に重要な役割を果たすことが期待される。 泥河湾盆地に所在する侯家窰遺跡、西白馬営遺跡、籍箕灘遺跡において河北省文物研究所の研究員と合同で地質・地形調査、古地磁気測定用試料、花粉分析用試料、OSL年代測定およびC-14AMS年代測定用試料の系統的な採取を実施した(8月)。また河北省文物研究所において侯家窰遺跡出土資料の実測・写真撮影・観察データ収集をおこなった(8月)。 長江下流域の前期旧石器文化の実態を把握する目的で、中国安徽省陳山・官山・毛竹山遺跡の資料調査、巣湖周辺遺跡踏査、レスー古土壌堆積物の野外観察を実施した(11月)。 韓国先史文化研究院と合同で実施した韓国最古の萬水里遺跡の資料調査(9月、12月、3月)は、過去50万年間に堆積したレスー古土壌連続中から層位的に出土した5枚の文化層の内容と変遷を具体的に解明するうえで貴重なデータとなる。これらは、次年度の分析を経て朝鮮半島で旧石器編年基準となるもので本地域の文化相の実態把握に寄与するであろう。 国内では、平成21年度に発掘した島根県砂原遺跡の地質・地形年代を確定する目的で周辺調査を実施した(6月、3月)。その結果,三瓶火山系テフラ層序の正確な把握のもと砂原遺跡の地質年代の絞り込みに火山灰層序学的観点から注目すべき進展を見た。 5月に韓国全谷博物館で開催された国際シンポジウムでは、研究成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国側で年代測定・分析を担当するOSL年代測定、花粉分析についての結果は出ていないが、日本側で担当する侯家窰遺跡の遺物包含層直下の泥炭層のC-14AMS年代測定は3点の試料について42,000y.BPより古いという年代が得られた。また日本側で担当する初期磁化率測定については現在分析中である。 なお侯家窰遺跡出土資料の全点観察データ収集には、さらに1週間ほどの追加調査が必要とされるが、次年度の調査で十分達成可能である。韓国萬水里遺跡出土の資料については、5枚の文化層から出土した全資料の観察データ収集を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
中国の中期旧石器時代の信頼すべき基準資料がない現在、侯家窰遺跡の高精度の地質学的年代把握と石器群内容の実態分析はきわめて重要である。全点属性データの収集を進めることが次年度の研究課題となる。更新世の古環境変動とも絡めて侯家窰遺跡と韓国萬水里遺跡のMISステージ5~3に属する豊富な資料との詳細な比較検討をおこなううえで、東北アジアの中期旧石器時代における信頼すべき編年基準が構築されることになる。 MISステージ5~3の時期は東アジアに現代型新人(ホモ・サピエンス)が出現した直前の時期に当たり、文化的な推移・変動を考古学資料から詳細に究明するうえでも重要な研究となるにちがいない。 と同時に、日本列島最古と目される島根県砂原遺跡の石器群の系譜を解明するうえでも大陸側に確固たる比較資料を確保することになろう。
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