本年度は、ロシア連邦ハバロフスク地方に3つの研究グループを派遣し、イルクーツク州へ1グループ、そして沿海地方にもう1グループ派遣した。ハバロフスク地方では、8月に先住民族ナーナイの集落ウリカ・ナツィオナリノエに連携研究者とロシア側研究協力者計5名を派遣し、人々の基本的な生業パターンと生業暦に関する情報を聞き取りと実際の狩猟漁業活動の観察から収集し、合わせてかつてナーナイが村を作っていた旧集落の地点の地形、立地条件等を観察した。また9月にロシア系開拓村のべレゾヴォ村に連携研究者と研究協力者計2名を派遣して、開拓民の生業暦と生産活動、儀礼活動に関するデータを収集した。同時にイルクーツク州に派遣した連携研究者は同地域のトナカイ飼育と狩猟に関する基礎データの収集を行った。さらに10月にハバロフスク地方のナーナイの別の村であるコンドン村に連携研究者と研究協力者の計4名を派遣し、同村周辺の旧集落の位置の確認と立地条件に関するデータを収集した。そして11月に研究協力者を1名沿海地方南部に派遣し、同地方における森林開発に関する聞き取り調査を実施した。 以上の調査の結果、ロシア極東南部の森林地帯における生業活動、あるいは生産活動の年間サイクルや組み合わせ方など基本的な情報と、集落の立地条件に関する基礎的な知見を得ることができた。次年度(平成22年度)には、生産活動や経済活動のより具体的で、細かいデータをそろえて、ロシア極東地域の森林地帯における環境利用に関する地理的、歴史的条件に基づく地域間の差異と、関係性について、もっと詳しく考察する予定である。
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