本年度は、1)ロシア連邦ハバロフスク地方のウリカ・ナツィオナーリノエ村とコンドン村で、先住民族ナーナイの食文化に関する調査と映像撮影、2)ロシア連邦ハバロフスク地方と沿海地方でツングースカ川、ビキン川、イマン川流域の考古遺跡の立地条件の調査、そして、3)アメリカ合衆国アラスカ州に移住したロシア正教の分離派教徒が入植、開拓した村落の調査の計3件の実地調査と、1回の研究集会を実施した。1)の先住民族の食文化の調査では、ナーナイの人々が食材である魚を捕る漁のポイントと漁法、肉を得るための猟のポイントと猟法、さらに植物性の食材を採集する場所を調査し、それらの食材の調理するための方法を映像記録に撮った。2)では新石器時代から中世、近代直前までの遺跡の立地条件の相違を中心に竪穴住居址、城郭址などを調査した。3)では極東ロシアや中国東北地方から移住してきた経緯とアメリカに移住する前後での生活の異同を調査した。研究会では調査報告とともに、衛星写真を使った調査地域の土地利用形態の変遷史解明の可能性について議論された。 極東ロシアでは、時代の相違や先住民系か移民系かの相違を越えて、狩猟と漁業と植物採集が、農耕や家畜飼育と比べても、食料生産全体の中で一定の重要性を占めており、居住形態もそれに合致したものとなっていることがわかってきている。今後は環境と時代状況がそれらにどのように反映しているのかに着目しながら、調査と分析を続けていきたい。
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