研究課題/領域番号 |
21251013
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
佐々木 史郎 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (70178648)
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キーワード | ロシア極東地域 / 先住民族 / 移民 / 森林 / 環境適応 / 生態 / 開発 |
研究概要 |
ロシア極東森林地帯における文化の環境適応の調査研究として、3年度目の平成23年には、以下の4種類の調査を実施した。 1)アムール水系の先住民族村落(ウリカ・ナツィオナーリノエとコンドン)におけるソ連時代の農業開発の痕跡の調査。具体的には、1960年代から70年代に撮影された衛星写真を入手し、そこに写されている農場があった場所を実際に訪れ、そこ画と現在どのようになっているのかを確認するとともに、その農場で働いた経験のある人からインタビューを取り、当時どのような作物がどのように生産されていたのか、なぜ、どのようにしてその農場が放棄され、現在のような状況(荒れ地あるいは森に戻っている)になっていったのかを確認した。 2)ロシア沿海地方で、金(11~12世紀)、東夏(13世紀)、パクロフカ文化期(11~12世紀)の遺跡の立地条件の調査を行った。 3)同じ自然環境,生態系を持ちながら、全く異なる歴史を歩んだ、アムール水系の中国側の先住民族(赫哲族、ロシアのナーナイと同じ民族)の集落を訪れ、その周囲の生態系、集落の立地条件、そして生業形態に関する聞き取り調査を行った。調査地は街津口と四排。 4)アムール水系の先住民村落における冬の狩猟調査。場所はウリカ・ナツィオナーリノエとコンドン これらの調査により、1)に関しては、すでにソ連時代末期には先住民集落周辺における大規模農場の衰退が始まっており、それは自然環境というよりは、経済、社会的な条件の変化によるものだったことが判明した。2)に関しては極東ロシアの自然村落の立地条件を確認できた。3)は同じ自然環境にあり、100年前までは同じ文化を持っていた人々が、その政治経済的な環境の相違によって文化の外形が大きく変わることが確認できた。3)の調査ではこの2つの村落の生業に関する基礎データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先住民村落における冬の狩猟調査が不十分だった以外は、先住民族集落における基礎データ集めも、考古学調査による先史時代以後の集落の立地条件に関する調査も、ソ連時代の開発政策の影響に関する調査も予想以上の成果をあげることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
極東ロシアの先住民村落の生業活動に関する基礎データは、冬の狩猟活動をのぞいてほぼ計画通りに収集できたことから、今後は冬の狩猟調査に力を入れる。また、比較の意味で始めた中国側のナーナイ(赫哲族)の調査ももう少し詳しく見るために平成24年度も継続して行う。衛星写真と現実調査を組み合わせたソ連時代の土地利用調査は、現地での基本的な事項の聞き取り調査は終えたので、写真から今後は植生などのより詳しいデータ解析を行い、聞き取りデータと突き合わせる作業を行う。
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