これまで人間のコミュニケーション行動は、F.KluckhohnとF.Strodtbeckの価値指向、さらにはG.Hofstedeの多国籍企業における価値観についての調査に見られるように、多種多様な文化を「権力格差」「個人主義/集団主義」といった側面から分類するという手法がとられてきた。これは、数多くの文化の中から、上記のような側面について似たもの同士をグループごとにまとめ、比較するという手法であった。しかし、例えば、中国人と日本人が実際に同じ企業で働く場合、「中国と日本は集団主義文化に属す」という調査結果は何を意味するであろうか?「同じ集団主義文化に属すから、中国人と日本人の間には何も問題ない」とは言えない。要するに、これまでの研究手法は、エテイック(全文化に共通の側面から人間行動を分析する手法)に偏りすぎていたと思われる。「文化が異なれば(たとえ、同じ集団主義文化に属していても)行動様式は異なる」ことを前提として分析を進める手法の開発が異文化間コミュニケーション研究には必要であった。そこで、異文化間コミュニケーション学と認知科学・脳科学分野の調査・研究を基に「文化スキーマ」という概念を構築し、異文化間の摩擦を説明した。「文化スキーマ」という概念を構築することにより、さまざまな文化の違いから起こる行動上の問題を詳細に分析することが可能になった。今年度は、異文化間コミュニケーション摩擦の認知摩擦(各文化の成員が獲得した認知的スキーマの相違により生じる摩擦)についてのデータを収集した。調査手法としては、協力企業を訪問し、調査目的・方法などを説明し、協力者の人数を確認した後、質問票を渡した。回答済み質問票は福岡女子大学へ郵送してもらった。中国進出日系企業34社、日本人194名、中国人407名から協力を得た。また、ベトナム進出日系企業19社、日本人127名、ベトナム人270名から協力を得た。
|