研究課題
これまで行ってきた沿岸露岩地域の隆起海浜と氷河堆積物の層序学的調査に加えて、表面照射年代試料の測定によって完新世前半の氷床後退過程がより詳しく明らかになった。内陸のセール・ロンダーネ山地では、表面照射年代測定試料の採取方法を改善したうえで多数の氷床変動復元のための試料を採取し、一部の分析が完了している。その結果、第四紀はじめから現在までの内陸部の氷床高度の低下過程が明らかにされつつある。東南極大陸棚では、新「しらせ」に搭載されたマルチナロービームを用いて海底下の氷河地形の調査を行った。その結果、過去に大陸棚末端付近まで氷床が着底したこと、現在の沿岸付近での堆積物の欠如が明らかにされた。この最後の氷床最拡大期の時代は不明であるが、陸上の氷床変動の層序からみて、最終氷期最盛期以前の時代であると予想された。また、沿岸付近の堆積物の欠如は、氷床拡大期における氷床底面における大量の融解水の存在を示唆すると考えられる。リュツォ・ホルム湾沖の南大洋・インド洋区で採取された海底堆積物と反射法地震探査およびシービームによる地形調査から、この地域のコンラッド海台では、南極周極流の緯度方向への変化と関連する2回の大きな堆積環境の変化が生じたことが明らかにされた。この変化は、南極氷床や海洋環境の変化と関連する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
東南極氷床変動史に関する表面照射年代が得られたとともに、南極海の地形・堆積物の解析と海洋環境変動史の復元も順調に進展したため。
東南極セール・ロンダーネ山地における氷床変動史の復元および南極周極流の変動に関してとりまとめを行う。
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Geoscience Frontiers
巻: 4 ページ: 623-632
Antarctic Record
巻: 56 ページ: 85-90