研究課題/領域番号 |
21253005
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 浩晃 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (30301930)
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研究分担者 |
宮町 宏樹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (30182041)
蓬田 清 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70230844)
中尾 茂 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (90237214)
谷岡 勇市郎 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (40354526)
吉澤 和範 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (70344463)
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キーワード | 国際研究者交流 / ロシア極東 / GPS観測 / 広帯域地震観測 / 稠密地震観測 / アムールプレート / 地震活動 / 上部マントル構造 |
研究概要 |
本研究においてロシア極東域に設置している観測網において得られた2011年3月11日に発生した東北地方太平洋地震に関するデータのうち,特にGPSのデータについて解析を実施した結果,ロシア極東地域を含む東北アジア地域で広範囲に地震時地殻変動を検出することに成功した.最も水平変動量が大きかったのはウラジオストクの4.2cmで,震源から2100kmあまり離れたゼーヤにおいても約5mmの変動があった.これらの結果は,この地震による変動が日本海を越えてユーラシア大陸内部,あるいは千島列島域まで確実に及んだことを示すものである.昨年までの研究から,想定されているアムールプレートのユーラシアプレートに対する相対運動量はたとえばウラジオストクでは年間1mm程度の速度である.それと比較すると,今回観測された変位は極めて大きい.このように,海溝部で発生した地震が遠く離れた地域まで地殻変動を及ぼすことは2006年中千島地震でも確認されており,本研究の目的である北東アジア地域でのテクトニックフレームを検討する場合に考慮することが必要であることが明らかになったことは大きな成果である. 地震観測分野では,引き続き広域広帯域地震観測網およびサハリン南部稠密地震観測網を維持しデータの蓄積をはかった.このうち,広帯域地震観測網では東北地方太平洋沖地震の波形の観測ができた.れらのデータを活用し,特にやや広域の地殻や上部マントル構造について解析手法を含めて検討を開始した.また,サハリン中部および北部の地震観測点データを公衆インターネット回線網を通じてユジノサハリンスクのデータセンターヘリアルタイムテレメータを行うための技術開発を行って,実現にこぎつけることができた.これにより,波形データの収集がより迅速に行われることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画にそって連続GPS観測や広帯域・稠密地震観測が順調に実施されてきておりデータも着実に取得されている.その結果,アムールプレートの運動速度がかなり小さいことが明らかになったことは大きな成果である.23年度に予定されていた機動GPS観測は東北地方太平洋沖地震という予期しないイベントの発生により延期され,代わりにデータ解析が優先されたことにより地震時地殻変動の広域的な特性が明らかにされたことは本研究の推進にとって大きな貢献である.特に,海溝での地震間カップリングが大陸内部にまで及んでいた可能性を示したことは,現在までのテクトニックフレームに見直しを迫るものであり,重要な成果と言える.
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今後の研究の推進方策 |
東北地方太平洋沖地震による広域地殻変動観測結果から,アジア北東地域のテクニックフレームを検討するには海溝軸でのカップリングの影響を考慮することが必要であることが示唆された.これまで,日本海東縁部からサハリンへかけての地震帯やロシア沿海州の活断層系はアムールプレートの影響によるものとの仮説で研究が進められてきたが,内部変形の可能性も含めた検討を行う必要がある.いずれの仮説をもってしても,日本海東縁やサハリン,沿海州で地震を発生させるには,何らかのメカニズムでひずみや応力が蓄積することが必要である.地震活動が内陸で見られるサハリンや沿海州で断層帯をはさんだ臨時GPS観測を実施し,そこで計測されるひずみ量のうち海溝でのプレートカップリングによる割合を推定することが必要であるとともに,詳細な地殻や上部マントル構造を明らかにして,ひずみが選択的に集中する機構についても更に検討を進める予定である.
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