研究課題
本研究計画4年目では,これまで調査を継続してきたモンゴル・アルタイ山脈に加え,新たにバイカル湖周辺のシベリア地塊周囲に分布する大陸衝突帯の調査を開始した.これらの調査地域の拡大により,ユーラシア大陸極東部(アジア大陸)全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸形成テクトニクスを明らかにするための基礎データ蓄積がほぼ完了した.本年度は,具体的に以下の項目を実施し着実な成果を得た.1.本年度当初は,これまでの海外調査による試料解析を継続し,新たにエクロジャイト相変成岩を見出すとともに,日本海拡大前の日本列島とアジア大陸の衝突型造山運動の関連を明らかにするため,西南日本各地の関連変成岩類・火成岩類の調査・分析を実施し,原岩推定と同位体年代測定を行った.2.シベリア地塊周辺に分布する実態が明らかではない大陸衝突型変成岩類・マントル物質の精密調査を実施し,最先端分析装置群を駆使して,変成岩岩石学的・火成岩岩石学的解析を行った.また,微小領域精密年代測定を実施した.3.3年目に実施したミャンマー・モゴック帯の変成岩類・火成岩類について,岩石化学的,鉱物化学的,同位体岩石学的解析を行い,衝突型変成作用のなかでは地殻浅部に由来する変成岩類の実態を明らかにした.また,アジア大陸形成最終期のインド亜大陸衝突の影響を解析し,成果を公表した.4.最終年度におけるアジア大陸のおける衝突型造山帯研究総括を円滑・迅速に実施するため,モンゴル,タイ,ミャンマー,ロシア,インドネシア,中国,スリランカ,インド等の関連研究者と密接に研究交流を行い,一部は招聘して室内実験を行った.なお,今年度は共同研究者を含め国際誌等に論文等を公表し,招待講演を含む多数の学会発表を行った.また,成果の一部は別に国際誌に投稿・査読中である.
1: 当初の計画以上に進展している
モンゴル中~北部地域の大陸衝突型変成岩類および関連火成岩類の調査を継続すると同時に,新たにロシア・バイカル湖周辺のシベリア地塊周囲の大陸衝突帯についても調査を開始した.これらは,日本の調査隊としては最初の試みとなる.前年度に実施したミャンマー,インドネシアの地質調査に基づく室内実験も活発に展開し,アジア大陸全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸形成テクトニクス解明に向けて着実なデータを得た.今年度は,これらで得られた多量の試料に対しREE分析および精密同位体年代測定を行い,岩石形成プロセスの解析と大陸地殻深部現象の解明を進展させた.また,アジア大陸から見たロディニア,ゴンドワナ等の超大陸変動過程を再検討するため,南極・セールロンダーネ山地の既存試料についても詳細な解析を実施した.24年度の研究成果は多数の国際誌論文として投稿し,公表および査読中である.
アジア各国の研究者・研究機関との連携が強化されており,24年度までの調査地域を精密化・広域化し,新たにロシア・中国を含め国際共同研究を一層進展させる.また,アジア大陸の形成過程と関連させた日本列島の地質形成過程を考察するため,ジュラ紀以前の国内地質体の調査を実施する.これらの調査で得られた岩石試料について,変成履歴の精密解析に加え,マルチアイソトープ年代測定を実施し多量の年代測定データを元に,アジア大陸における衝突帯深部現象・衝突テクトニクスを明らかにし,国際誌を含めて成果の公表を急ぐ.研究最終年度となる25年度は,各国共同研究者と連携して研究総括のためのワークショップをモンゴルで開催する予定であり,研究交流を推進するとともに,本研究課題に関する国際シンポジウム開催に向けて準備を開始する.
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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