| 研究分担者 |
大村 達夫 東北大学, 工学研究科, 教授 (30111248)
風間 聡 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50272018)
吉村 千洋 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10402091)
藤田 正治 京都大学, 防災研究所, 教授 (60181369)
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
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| 研究概要 |
本研究は,ヨーロッパの原生的な河川生態系が残されているタリアメント川において,洪水氾濫原の生物多様性が形成・維持される仕組みを追究し,河川環境評価指標としての生物群集の進化ポテンシャルを示すことを目的としている.昨年度は以下の成果を得た.
1)流域の土砂生産や降水流出の変化が氾濫原の河床地形に与える影響
流域の土砂生産・供給過程のモニタリング地点を2ヵ所設定し,地表面熱収支,凍結融解土砂生産,降雨土砂流出を推定するための機器設置と写真測量を開始した.中流域の氾濫原区間について3時間ごとの連続写真撮影によって河床地形変化のモニタリングを継続するとともに,GPS測量による地形把握を行い流れ場と河床変動モデルを構築した.流出モデル構築のため5種3シナリオのGCMデータと1km解像度の標高データを収集した.
2)氾濫原地形の生態系機能評価
全流程から20地点を調査地に選び,単列,複列,網状の各流路で微生息場調査と底生動物群集の定性採集を実施し,各生息場の安定同位体比分析用の有機物サンプルを得た.氾濫原河床地形の生態機能評価を行うために,氾濫原の生息場構造と群集多様性ならびに栄養起源特性との対応関係を分析している.
3)氾濫原地形の系統的多様度と進化ポテンシャル評価
全調査地点の生息場別底生動物について遺伝子解析に供する試料を得た.採集した標本からミトコンドリアDNAのCOI領域と核DNAのh3領域の塩基配列を解読するための機器や試薬の準備が完了した.流域全体と区間別の系統的多様度ならびに系統樹の種間進化時間の総和である系統学的多様度によって,進化ポテンシャルを評価する.
今後,1)の河床変動モデルと,2)の地形生態機能,ならびに3)の進化ポテンシャルを統合することによって,氾濫原の生物多様性や生息場構造の形成・維持に働く土砂生産・流出・土砂水理過程を示し,世界標準の河川環境再生目標を提案する.
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