研究課題
本年度は、昨年度までの成果に基づき、以下の調査研究を実施した。まず、カンボジア側研究機関であるアンコール地域遺跡保護管理機構との連携を強固にするため、研究に関する覚書の締結を行った。ただし、この実現にあたっては、本年に発生した現地での大規模洪水等の影響から大幅に遅れることになり、本年度の現地調査を乾季に実行することができなかった。その間、昨年度までに得られたデータに基づき、手法の確立という観点から、表流水水位の変動に伴う地下水位応答の評価をするための方法論の確立を行い、また、水中に存在するウイルスの定量化に関する新しい方法の開発を実施した。一方、現地に関する今までの理解に基づき、人間活動の影響を強く受けた地域であるシエムリアップに関する理解を深めるためには、対照調査地域として、人間活動の影響をそれほど強く受けていない地域をトンレサップ湖周辺に設定することが重要であることが明らかになってきた。このような観点から、カンボジア西部に位置するバッタンバン地域を調査することとし、その準備を行った。実際には、本年度11月(雨季)及び3月(乾季)に現地調査を実施し、地表水及び地下水環境の季節変化に関するデータ取得を開始した。ここでは、シエムリアップ地域で行ったのと同様に、地下水の水質・年代指標に関するデータ取得のための試料採取を行い、また、地域の主要な河川であるサンカー川の流量・水質の計測を行った。さらに、地下地質に関する情報の収集も実施し、次年度以降の集中的な調査に向けての準備を行った。
3: やや遅れている
カンボジア側研究機関であるアンコール地域遺跡保護管理機構(APSARA機構)との連携が、本年の大規模洪水等の理由により大幅に遅れたことから、今年度の現地調査の開始時期を乾季に実行することができなかった。そのために、研究の進捗にやや遅れが発生した。一方、その間、今までに得られた調査結果に基づいた整理を行い、今後の調査を新たにバッタンバン地域で行うことが有意義であるとの結論を得たことは重要な進展であると考えている。
平成23年度までに、人為的な影響を強く受けた地域であるシエムリアップ周辺での水環境についての理解を深めることができたが、この影響がどの程度大きいのかをより正確に知るためには、人為的な影響を強く受けていない場での研究が重要であると考えられる。従って、平成24年度からは、人為的な影響を強く受けていないと判断されるカンボジア西部のバッタンバン地域での調査研究を開始し、その成果とシエムリアップ周辺での平成23年度までの成果を比較検討することにより、さらに研究を進めていく。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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