世界で唯一、湖底にメタンハイドレートを産する淡水湖「バイカル湖」は、ハイドレート包有ガスの組成および起源が採取場所により異なり、さらに、生成ハイドレートの結晶構造も変化するという複雑な多様性を有することが明らかにされている。本研究は、こうした多様性を把握した上でハイドレート生成メカニズムを理解するための基盤となる「表層ハイドレートのキャラクタリゼーション・マップ」の作成を目指している。ハイドレート生成活動は時間と共に変動すると考えられるが、その動態を把握するためにはモニタリング調査が必要であり、本研究はその基礎を確立しようとするものである。 本年度は、ロシア科学アカデミーシベリア支部陸水学研究所(グラチェフ所長)と共同で、ロシア調査船ベレシャーギン号を用いて2009年9月3日~19日にバイカル湖中央湖盆および南湖盆においてフィールド調査を行った。これまでに得られた音波探査(サイドスキャンソナー探査、マルチビームプロファイラー探査、地震探査等)データを参照しつつ、音響探査を実施しながら、選定された表層ハイドレートの生成候補地点で重力コアラーによる掘削を行い、合計約48mの湖底堆積物表層コアを採取した。現場では、コア採取後直ちにコア層位が観察され、ヘッドスペース法によりガスサンプルが、スクウィーザーおよび遠心分離器を用いて間隙水サンプルが収集された、調査船に搬入したガスクロマトグラフ測定装置を用いた現場解析からは、メタンハイドレート包有ガスおよび堆積物間隙水溶存ガスの組成が明らかになり、さらに数本の湖底コア解析からは、湖底表層部の溶存ガス濃度プロファイルが得られた。 フィールド調査後の研究室内コア解析については、現在北見工業大学未利用エネルギー研究センター等において、主として堆積物間隙水の化学分析と、間隙水溶存ガスの組成および同位体解析等が行われている。
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