研究課題/領域番号 |
21255003
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (90212026)
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研究分担者 |
奥宮 清人 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (20253346)
岩田 明久 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (20303878)
山本 宗立 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 准教授 (20528989)
鈴木 玲治 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (60378825)
中辻 享 甲南大学, 文学部, 准教授 (60431649)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 林学 / 東南アジア / 山地民 / 焼畑 / 生活環境 |
研究概要 |
東南アジア大陸部山地の森林の攪乱動態と山地民が生活環境保全のために経験的に蓄積してきた生態智を明らかにするために、ラオスとミャンマーで臨地調査をおこなった。 10月と12月にラオス北部のカム焼畑村落で2012年焼畑全筆の同定と世帯聞き取り調査を実施した。2005年から継続している調査で8年間の焼畑全筆データを蓄積することができた。RapidEye 衛星画像(分解能:5m)を用いて作成した植生図と8 年分の焼畑ポリゴンを重ね合わせ、休閑期の植生回復状況を時間的連続軸に沿って解析した。休閑地植生回復ではSchima wallichii やCratoxylum formosum などの木本の早期の萌芽再生が重要である。しかし、短期休閑の焼畑の繰り返しは、木本の早期の萌芽再生を活かした短期休閑システムを崩壊させる危険性がある。一方で調査村では商品作への移行が可能となってきたが、それは農家の生計と土地利用を不安定なものにしかねない。焼畑民の生活の安定化には陸稲の栽培によって飯米を確保しつつ、家畜飼育と組み合わせながら、農作物作付期と休閑期の双方に商品作の導入を図っていくことが重要であると同時に、草地休閑と叢林休閑との違いを理解した植生回復への配慮が欠かせない。 11月にはバゴー山地で臨地調査を行った。同村では平均休閑期間は12年前後と在来の長期休閑型焼畑土地利用を維持している。19世紀末のカレン領域制定から続くカレン焼畑土地利用では、自給用陸稲生産という基本的な性格は変わらないが、道路通信事情が改善され、そして学校教育が普及する中で、商品作の導入や賃労収入の増加など市場経済との接合が少しずつ進行している。 また両村における山地民の生活環境に関する聞き取り調査をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
焼畑サイクル(平均休閑年数)の全期間にわたって全筆全世帯の基礎情報を正確に把握することに、ラオス北部のカム村落では成功した。ミャンマー・バゴー山地のカレン村落の焼畑サイクルは12年と長いが、2013年の調査でそれも完成する予定である。焼畑をいまだ全面的におこなっている地域での焼畑サイクル全期間にわたる継続した全筆位置調査資料は、地域を超えて焼畑耕作に関する稀有な基礎情報となる。2012年度にはこれらの成果を、第22回日本熱帯生態学会(6月横浜国立大学) 、The 55th Symposium of the International Association for Vegetation Science(7月韓国・木浦)、第112回日本熱帯農業学会講演会(10月名古屋大学)、第113回日本熱帯農業学会講演会(3月茨木大学)などで報告するとともに学術雑誌で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
ミャンマーとラオスでの焼畑モニタリング調査を継続するとともに、これまでに蓄積したデータを解析して成果を取りまとめる。RS/GISによる土地利用図と世帯データを結びつけて活用し、森林の攪乱動態と生活環境の関連性を検証する。山地民は焼畑を営む生態空間を急速に失いつつあり、その生活環境の保全は喫緊の課題である。その意味で問題解決に資する成果を発信していきたい。2013年度には関連研究者を招いて京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科で国際ワークショップを開催し、5年間の成果をまとめる。ワークショップの成果報告書を出版するとともに、できるだけ早い時期に単行本を出版する準備をすすめる。
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