研究課題
本研究では、東南アジアの熱帯雨林に生息する節足動物の多様性と群集構造を解明するために、ボルネオ島マレーシア国サラワク州のランビル国立公園において、この地に設置されている林冠観測システムを利用した林冠生息性の節足動物を対象としたサンプリング調査と、林床の下層植生に生息する節足動物を対象としたサンプリング調査を、それぞれ年間数回以上、5年間にわたって行った。得られた各種の節足動物のサンプルには、多数の未記載種が含まれており、熱帯雨林に生息する節足動物の種多様性がいまだに十分に把握されていないことが改めて示された。それらの未記載種のサンプルは、連携研究者である分類学研究者の研究材料として供され、その一部については、新種としての記載がなされた。林冠から得られたサンプルにより、熱帯雨林の林冠の表層部では、個体数と生体量において、アリ類、クモ類、半翅目が節足動物群集の大きな部分を占めていること、前二者は排他的な空間分布を示すこと、半翅目の大部分は寄主植物に対する特異性をほとんど示さないことが示された。また、林冠に生息するハムシ類では、それぞれの種の成虫が利用する寄主植物の食性幅は従来予想されていたよりはるかに幅広いことが示された。着生植物は、それ自身に共生するアリやそれが涵養する土壌中に営巣するアリの活動を通して、植食性昆虫の量、アリの種構成、つる植物の存在量などの林冠の生物群集の特性に大きな影響を与えていることが示された。さらに、オオバギ属アリ植物を利用する植食者群集の採餌行動・寄主利用様式を、飼育・観察・野外実験によって分析した結果、熱帯雨林ではアリが植食者群集の資源利用様式に広汎な影響を及ぼすことで、生物多様性の増大に貢献していることが示唆された。安定同位体比分析により、林床と林冠では、植物を起点とする生食連鎖と土壌の腐食質を起点とする腐食連鎖の重要度が異なることが示された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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