研究課題/領域番号 |
21255008
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高須 啓志 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (50212006)
|
研究分担者 |
足達 太郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (50385506)
高木 正見 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (20175425)
津田 みどり 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (20294910)
徳田 誠 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60469848)
|
キーワード | 侵入害虫 / 生物的防除 / 天敵昆虫 |
研究概要 |
インドネシア・パプアニューギニア原産と考えられる害虫キムネハムシは2000年代に東南アジアに侵入し、ココヤシに大きな被害を与えている害虫である。現在東南アジア各地で実施されている寄生蜂を利用した生物的防除の有効性を科学的に検証することが本研究の目的である。これまでに、本害虫には遺伝的に異なる2つの系統(AP系統、PNG系統)が存在すること、これまでの侵入地での大発生はAP系統によるものであること、卵、幼虫、蛹の寄生蜂が数種存在することが明らかになった。そこで、本年度は、2系統の生態的特性の差異を明らかにし、AP系統が侵入と大発生に至る過程を明らかにするとともに、2系統のおける土着天敵の有効性を野外調査および室内実験で明らかにした。まず、AP系統はPNG系統に比べ、発育速度は遅く、成虫体サイズは小さいが、成虫の寿命が長く、生涯産卵数が多いことがわかった。また、PNG系統が分布する原産地と考えられるパプアニューギニアやスンバ島、東チモール東部では、本種は主に苗や若い木のみを加害するが、AP系統が分布する東南アジア、沖縄、スンバ島を除くインドネシアでは高木も加害する。以上の結果から、AP系統は他の侵入害虫に比べ増殖力は低いが、高木の大きな新芽で3-4世代が重なって繁殖しながら数を増やして害虫化に至ると考えられた。また、PNG系統にはパプアニューギニアに分布する黒型とスンバ島、東チモールに分布する茶型の2つの型が存在した。幼虫寄生蜂が導入されたタイやベトナムでは、導入後本種の個体数の減少後寄生がほとんどみられなかった。これは本寄生蜂が本来PNG系統に寄生するもので、東南アジアのAP系統には適応していないことや本種が高温、乾燥に弱いことが原因であり、乾季がある熱帯では本種による生物的防除は有効ではないと考えられた。一方、台湾やインドネシアに過去の放飼された蛹寄生蜂は、本来AP系統に寄生する種であること、高温や乾燥により強いことから、熱帯各地での本種の生物的防除に有効である可能性が高い。
|