研究概要 |
(1)代表者が主宰する日中韓露四ヵ国共同研究体制により,わが国(金沢,東京,札幌,北九州)及び中国(北京,瀋陽,上海),韓国(ソウル,釜山),ロシア(ウラジオストク)で,ハイボリュームエアーサンプラーを設置し,毎季節1週間ずつ,毎日フィルターとカートリッジを交換しながら浮遊粒子状物質の連続捕集を継続した。代表者らが開発した超高感度HPLC-蛍光/化学発光法により,現在PAH,NPAHを分析中である。これまでに得られた分析結果では,わが国の金沢市及び東京では,過去10年間に大気中PAH,NPAH濃度は減衰傾向を示していた。特にNPAH濃度の低下は著しかった。この主な理由として,[NPAH]/[PAH]組成や他の大気環境基準項目の推移を考え合わせた結果,両都市における自動車からの排ガス規制の強化と,東京におけるディーゼル車走行規制の実施の効果が推定された。(2)能登半島先端に設置したハイボリュームェアーサンプラーで5年間にわたって毎週ごとに得られた浮遊粒子状物質中のNPAH濃度を上述の方法を改良して分析した結果,既に報告したPAHだけでなく,極低濃度のNPAHも初めて検出でき,PAH濃度と同様の季節変動(冬>夏)を呈していることがわかった。[NPAH]/[PAH]組成及び後方流蹟線解析の結果,冬季のNPAHも中国東北部から長距離輸送されていることが強く推定された。(3)共同研究者らが開発した尿中NPAH代謝物量測定法を瀋陽,上海,金沢の住民の尿に適用した結果,NPAH代謝物量は,瀋陽>上海>金沢となり,大気中濃度と同じ傾向を呈したことから,本法がヒトのNPAH曝露量を把握できる有用な方法であるこたが示された。
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