研究概要 |
無交差幾何グラフの列挙問題に対し大きな成果を得た.既存の無交差幾何グラフの列挙アルゴリズムは各グラフクラスの性質に大きく依存していたため,他の問題に同じ手法を適用することができなかった.しかし我々は三角形分割の組合せ的性質を巧く利用することで,列挙対象となるグラフクラスの性質に依存しない一般的なアルゴリズム設計の枠組みの確立に成功した.また組合せ剛性理論に関する研究においても大きな成果を得ることが出来た.特に,TayとWhiteleyによる剛板ヒンジ構造の組合せ論的剛性特徴付け予想の解決は重要な結果である.剛板ヒンジ構造の一次剛性は分子構造の一次剛性と一対一対応することが知られており,そのためこの予想は"Molecular Conjecture"と呼ばれていた.応用の観点からも非常に重要であるにもかかわらずこれまで未解決であったこの問題を我々は肯定的に解決した. 最適な避難計画を求める問題をモデル化した動的ネットワークフローに対する研究に関しては,グリッドネットワークを一般化したネットワークにおける普遍的最速流問題に対する多項式時間アルゴリズムの開発という理論的な成果と,動的ネットワークフローを用いた京都における避難所の収容人数の評価という応用的な成果を得ることができた.前者の普遍的最速流は理論的に非常に難しい問題であり,多項式時間で解けるネットワークのクラスがほとんど知られていなかったため,この問題が多項式時間でとけるネットワークのクラスを一部明らかにすることができたことは非常に大きな成果である.また,後者の避難所の収容人数の評価の研究に関しては,動的ネットワークフローは実用上非常に強力なモデルあることは知られているが,実際にこのモデルを実際の都市のデータに適用した例は,まだそれほど多くないため,この研究によってさらなる実用化に向けての一歩を踏み出すことができたと考えている.
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