研究概要 |
避難計画問題に対する理論的なアプローチとして,本年度は,避難所の収容人数の評価や現実的な制約を加えた避難計画問題を解く際に必要となる,最も基本的な問題である最速輸送問題に対するアルゴリズムの研究を行った.具体的には最速輸送問題に対する唯一の多項式時間アルゴリズムであるHoppe and Tardosの手法の簡略化・高速化を目指した.このアルゴリズムのサブルーチンである劣モジュラ関数最小化の使用を避けることが目標達成の重要な点となるのだが,この点に関して多面体的アプローチや特殊な最小費用流の使用が,有益となるであろう知見を得ることができたが,問題の解決には至らなかった.来年度は本問題の解決および現実的な問題への適用を目指す. また,避難計画問題に関する応用問題として,本年度はセルラーオートマタと動的ネットワークフローを融合した,建築空間スケールでの最速避難誘導モデルを構築した.この方法では,大きさ1mの単位格子で構成されるセルラーオートマタの隣接グラフとして,移動時間と辺容量がそれぞれ1の動的ネットワークを構成し,普遍的最速フローモデルを適応して求めた最速フローをパス分解することで避難誘導を行うものである.このモデルを大規模なショッピングセンターに適応することで,避難誘導を行わない場合と比較して,2割程度避難完了時間が短縮されることを確認した. 組合せ剛性理論において、冗長性のあるフレームワークの組合せ的特徴付けをおこなった。任意のk本のbarを除いても剛であるようなフレームワークを(k+1)-edge-rigidと定義し、Lamanフレームワークから最小の本数のbarを付加して2-edge-rigidのフレームワークを得ることを目的としたGarcia等のアルゴリズムの背後にある組合せ的特徴を明らかにした。また、jointの数が一定の下で、最小のbarの本数を持つ3-edge-rigidフレームワークをすべて生成するアルゴリズムを構築することに成功した。同様に、最小のbarの本数を持つ5-edge-rigidフレームワークを生成するアルゴリズムを開発したが、そのようなフレームワークをすべて生成しているかどうかについては未解決である。
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